パウロ・ローシャ監督特集2023
Retrospectiva de Paulo Rocha 2023
作品選定:
ペドロ・コスタ Pedro Costa(『ヴァンダの部屋』『ヴィタリナ』監督)
ジョゼ・マヌエル・コスタ José Manuel Costa(シネマテッカ・ポルトゲーザ館長)
2023年2月24日(金)–3月4日(土)(8日間/日曜休館)
会場:アテネ・フランセ文化センター
初監督作『青い年』(1963)でポルトガル映画の新潮流「ノヴォ・シネマ Novo Cinema」の旗手となったパウロ・ローシャは、14年の歳月をかけて完成させた日本・ポルトガル合作映画『恋の浮島』をはじめ、2012年に歿するまでに20本弱の作品を世に送った。 2021年に続く今回の特集では、ローシャを敬愛するペドロ・コスタ監督が選んだ6本の作品に、シネマテッカ・ポルトゲーザのジョゼ・マヌエル・コスタ館長が選定した4作品を加えた10作品で、ポルトガル映画の代表的な映画作家パウロ・ローシャの足跡をたどる。 また、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督とローシャ最後の愛弟子サムエル・バルボーザ監督のローシャ関連作品も特別上映。
パウロ・ローシャ監督特集 予告編(編集:ペドロ・コスタ Pedro Costa)
Paulo Rocha - Rétrospective from La Cinémathèque française on Vimeo.
※本予告編は2018年にシネマテーク・フランセーズで行われた「パウロ・ローシャ監督特集」のためにペドロ・コスタ監督が作成したものです。日本での特集に際して、コスタ監督からご提案をいただきましたので使用させていただきます。
ポルトガルのシネフィル、映画を学ぶ学生、映画監督を目指す者、映画監督のなかで、パウロ・ローシャに大きな借りをもたぬ者はいない。パウロより前に、1960年代においては、マノエル・ド・オリヴェイラという比類なき英雄がいたが、それに加えて心の底から称賛することができ、私たちの映画だと思えるような作品は、無声映画とドキュメンタリー映画にわずかに存在するだけだった。
やがてアントニオ・レイスが登場するが、アントニオさえもパウロに負うものがある。
私たち“家族”のなかで、パウロはつねに若く、絶望の詩人であり続け、甘美でありながらも物哀しいリスボンを撮影する術を知る最初の人間だった。彼は自分自身からは遠く隔たった社会的、文化的、感情的なリアリティと向き合い、アヴァンギャルドと戯れた。
そして、「失われた国に光を」(*)追い求めて、彼は壊れた幽霊船に乗り、日本へと航海した。
私自身のパウロへの恩義は、計り知れないものだ。少しでも彼に恩返しする機会を持ち得たのは幸運だった。その晩年に、彼の初期モノクロ作品の二本、『青い年』と『新しい人生』の輝きを取り戻す手助けをするようパウロから請われたのだ。
私の人生のなかで、忘れがたい時、もっともかけがえのない瞬間のひとつだ。
私はあなた方に約束する。パウロ・ローシャの映画を観に来ればきっと報われるであろうことを。
──ペドロ・コスタ(2021年11月)
*『恋の浮島』第3歌に引用されるポルトガルの詩人カミロ・ペサーニャ(1867–1927)の詩の一節「私は失われた国に光を見た」を踏まえている。──訳注
■上映スケジュール
※チケットは1本目の上映20分前から当日上映分を販売します。
2月24日(金)
15:00 | 『青い年』(85分) |
17:00 | 『新しい人生』(93分) |
19:00 |
オープニングトーク (※オンライン): ジョゼ・マヌエル・コスタ(シネマテッカ・ポルトゲーザ館長) 司会:土田環(映画研究者) |
2月25日(土)
13:00 | 『恋の浮島』(169分) |
16:20 | 『モラエスの島』(102分) |
18:30 | 『ローシャの円卓』(94分)【特別上映】 |
2月27日(月)
15:00 | 『待望されし者 あるいは月の山』(122分) |
17:30 | 『鋼の仮面/青の深淵』(64分) |
19:00 | 『黄金の河』(101分) |
2月28日(火)
14:20 | 『心の根』(118分) |
16:50 | 『虚栄 あるいは異界』(100分) |
19:00 | 『もしも私が泥棒だったら…』(87分) |
3月1日(水)
14:30 | 『青い年』(85分) |
16:30 | 『新しい人生』(93分) |
18:30 | 『待望されし者 あるいは月の山』(122分) |
3月2日(木)
14:10 | 『黄金の河』(101分) |
16:20 | 『虚栄 あるいは異界』(100分) |
18:30 |
『鋼の仮面/青の深淵』(64分) オンライントーク録画版上映: 「ペドロ・コスタ、パウロ・ローシャを語る」(2021年11月26日収録) |
3月3日(金)
15:00 | 『もしも私が泥棒だったら…』(87分) |
17:00 | 『鋼の仮面/青の深淵』(64分) |
18:30 | 『心の根』(118分) |
3月4日(土)
13:00 | 『虚栄 あるいは異界』(100分) |
15:10 | 『待望されし者 あるいは月の山』(122分) |
17:40 | 『青い年』(85分) |
19:30 | 『慎重の寓意』『この通りはどこ? あるいは、今ここに過去はない』(計90分)【特別上映】 |
■監督プロフィール
パウロ・ローシャ
Paulo Rocha
1935年ポルト生まれ。リスボン大学中退後、パリの高等映画学院(IDHEC)で学ぶ。ジャン・ルノワール(『捕えられた伍長』1962)、マノエル・ド・オリヴェイラ(『春の劇』1963)の助監督を経て、初監督作『青い年』(1963)でロカルノ国際映画祭新人監督賞に輝き、ポルトガル映画の新潮流「ノヴォ・シネマ Novo Cinema」の旗手となる。第二作『新しい人生』(1965)と数本の短篇を撮った後、駐日ポルトガル大使館文化担当官として東京に赴任(1979–1983)。その間、日本の徳島に歿したポルトガル人作家モラエス(1854–1929)の生涯を前衛的手法で描く日本・ポルトガル合作『恋の浮島』(1982)を完成。帰国後『源氏物語』の翻案『待望されし者 あるいは月の山』(1987)を撮る。他にフランスのTVシリーズ「現代の映画」でオリヴェイラと今村昌平についてのドキュメンタリーも監督している。2012年、ポルト郊外で逝去。遺作は自伝的なフィクション『もしも私が泥棒だったら…』(2012)。