堀禎一そして/あるいは現代映画
Teiichi Hori et/ou le cinéma contemporain

2021年8月14日(土)–8月21日(土)(日曜休館/7日間)
会場:アテネ・フランセ文化センター

天竜区

夏の娘たち

天竜区


2016年6月にアテネ・フランセ文化センターが行った「新日本作家主義烈伝 vol.12 堀禎一」の企画立案の際、堀監督は自作と自身が影響を受け、触発された作品との同時上映を希望した。翌年、熱狂的な評価の高まりの中で堀監督が急逝。その才能を惜しむ声は今も絶えない。本特集は、5年前の構想をふまえつつ、監督の生前の発言、執筆した文章、映画仲間の証言をもとに選んだ「現代映画」と併映することで、堀作品の現在性を問う試みである。

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■上映スケジュール
※チケットは1本目の上映20分前から当日上映分を販売します。

8月14日(土)

12:40 『イタリア旅行』(85分)
14:30 『宙ぶらりん』(64分)
16:00 『イタリア旅行』(85分)
17:50 『宙ぶらりん』(64分)
19:00 トーク:木下千花(映画研究者)

8月16日(月)

12:30 『彼女たちの舞台』(160分)
15:40 『妄想少女オタク系』(113分)
18:00 『彼女たちの舞台』(160分)

8月17日(火)

12:30 『えんとこ』(100分)
14:40 『天竜区奥領家大沢 別所製茶工場』『丘陵地帯』(計97分)
16:50 『えんとこ』(100分)
19:00 『天竜区奥領家大沢 別所製茶工場』『丘陵地帯』(計97分)

8月18日(水)

13:30 『天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝』『吉野葛』(計85分)
15:20 『最後の人々』(68分)
17:00 『天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝』『吉野葛』(計85分)
19:00 『最後の人々』(68分)

8月19日(木)

15:40 『彼の部屋から』(70分)
17:20 『天竜区奥領家大沢 夏』(67分)
19:00 『彼の部屋から』(70分)

8月20日(金)

15:00 『北の冠』(90分)
17:00 『天竜区奥領家大沢 冬』(94分)
19:00 『北の冠』(90分)

8月21日(土)

13:50 『晩春』(108分)
16:10 『夏の娘たち~ひめごと~』『天竜区旧水窪町 山道商店前』(計77分)
17:40 トーク:クレモン・ロジェ(映画批評家)
聞き手:高崎郁子(映画研究者)


自分には映画をやる資格なんかないのだとはっきり自分自身に断定させ、でもやるのだと決意させ、この映画を見直す度胸がつくまで自分のことを映画監督だなんて少なくとも言わない様にしようと思わせた映画。見た当初から結構長い間、ただ単に、巨大に恐ろしかったその『イタリア旅行』がいまだになんであるのか僕には全く理解できない。でも映画はそんなもんだろうと思う。そして僕にとって未来の映画はこれからも多分『イタリア旅行』であり続けると僕は思っている。

――堀禎一「伊藤洋司君との出会い、そして僕の修業時代」
(『中央評論』264号、2008年)


ジャン゠クロード・ルソー監督は個人映画という敢えてミニマムな方法を採用することでコントロール出来ない内・外部と直接肌を擦り合わせ、時には気の遠くなるような時間を費やし自らの映画を築き上げている。その痛みはまるで、経験から得た深い知恵と溌剌とした好奇心に裏打ちされた個性の強い職人集団の冒険心を喪ってしまった映画の、今ではすっかり忘れられた古い歌を細々と歌い継いでいるかのようだ。

――堀禎一「「ここに手が、ほら、顔が!」」
(『中央評論』287号、2014年)


(…)小津安二郎監督の映画はこぼれおちた永遠をいつまでも画面にとらえ続けている。その色あせることのない新鮮な驚きは、まるでさっき撮ってきたばかりの棒やきのラッシュフィルムを見ているかのようだ。そして監督本人もまた、その永遠の中にいる。

――堀禎一「小津安二郎監督の「技術」入門編」
(『中央評論』270号、2010年)


『吉野葛』はまるでバスター・キートンの映画のようだ。もちろんこの作品が優れた喜劇であるという意味においてもそうなのだが、歴史的にも文化的にも物語的にも豊穣な吉野という地に降り立った葛生賢という映画作家が、豪奢で広大なセットを建造しながらも、その豪奢さや広大さを観客を陶酔させる装置として利用するのではなく、逆にどちらかと言えば自ら演じる主人公を不自由にするための仕掛けとして莫大な予算をつぎ込みながら、映画を撮り続けたバスター・キートンと重なったからだ。

――堀禎一「『吉野葛』バスター・キートン的政治映画」(2008年)



■監督プロフィール

堀禎一
Teiichi Hori

1969年兵庫県生まれ。東京大学在学中、1年ほどパリでシネマテーク通いの日々を送る。帰国後、数本の8ミリ短編を自主制作(現存せず)。同大学仏文科卒業後、ドキュメンタリー映画作家の佐藤真が構成・編集を担当した『おてんとうさまがほしい』(1994)の制作助手を経験した後、ピンク映画界入りし小林悟に師事。北沢幸雄、サトウトシキらの助監督を務める。『宙ぶらりん』(2003)で監督デビュー。同作を含む3本のピンク映画を発表後、『妄想少女オタク系』(2007)で一般映画に進出。ライトノベルやコミック原作の青春映画に活動の場を拡げる。『魔法少女を忘れない』(2011)の後、数年の沈黙を経て、静岡県の過疎集落に生きる山間の人々の生活を記録した上映時間4時間超のドキュメンタリー「天竜区」シリーズ(2014–2017)を完成。続いて『夏の娘たち~ひめごと~』(2017)で新境地を開くが、その公開と同時に開催された初の全作品回顧上映の会期中に倒れ急逝(享年47)。


【お知らせ】
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発出に伴い、本特集の販売席数を 79席に減席いたします。
ご理解のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

■各回入れ替え制


■料金

[1回券]
一般=1500円
学生/シニア=1200円
アテネ・フランセ文化センター会員=900円

[2回券]
一般=1800円

チラシのダウンロードはこちら

堀禎一そして/あるいは現代映画

堀禎一そして/あるいは現代映画

■お問い合わせ・会場

アテネ・フランセ文化センター
東京都千代田区神田駿河台2-11
アテネ・フランセ4F
JR 御茶ノ水・水道橋駅より徒歩7分
03-3291-4339(13:00-20:00)

■主催

アテネ・フランセ文化センタ—
Athénée Français Cultural Center