翼に賭ける命

The Tarnished Angels 1957年(91分)

監督/ダグラス・サーク

プロデューサー/アルバート・ザクスミス 原作/ウィリアム・フォークナー 脚本/ジョージ・ザッカーマン 撮影/アーヴィング・グラスバーナー 音楽/フランク・スキナー 美術/アレキサンダー・ゴライツェン アルフレッド・スウィニー 衣装/ビル・トートマン

出演/ロック・ハドソン(バーク・デブリン) ロバート・スタック(ロジャー・ジャーマン) ドロシー・マローン(ラバーン・シャーマン) ジャック・カーソン(ジッグス)

(あらすじ)
 1932年、新聞記者のバーク・デブリンは、ニユーオリンズで開かれている曲芸飛行機競技会について、簡単な記事を書くように命ぜられたが、図らずも彼の記者生活中、もっとも興味深い事件に転がり込むこととなった。
 取材のために飛行場に赴いたバークは、そこで愛機の整備に忙しいロジャー・シューマンに出会った。彼は第一次世界大戦で空の英雄と崇拝されていたが、今はその日その日を飛行機競技に命をかけ、わずかな賞金を貰っては妻のラバーン、息子のジャック、整備員のジッグスたちと不安定な生活を送るパイロットである。
 競技を明日に控え、人並みに部屋を借りることもできないロジャーたちに同情したバークは、良い記事を得るために自分の部屋を提供した。その夜、バークはラバーンに興味ある話しを聞いた。ラバーンは貧しい農家に生まれたが、パイロットのロジャーに魅力を感じて家出し、整備員のジッグスと3人で共同生活を始め、自分もパラシュート降下技師になって各地を巡業してまわった。3人の関係は微妙だった。ラバーンはジッグスの優しさに惹かれ、彼女が妊娠にたときダイスを転がして、自分かジッグスのどちらが彼女と結婚するか決めるようなロジャーを軽蔑した。しかし飛行機と空中レースにとりつかれたロジャーに、強い魅力を感じてもいるのだった。
 空中レースそのものよりも、彼らの生活に興味を持ったバークは、翌朝編集長に報告した。怒った編集長は代わりに政治関係のインタヴューを命じたが、彼は頑として応じず首にされてしまった。
 いよいよ空中レースのスタート。ついに農具製造業者マット・オードの所有する、スマートな最新式飛行機と先頭を争ったロジャーだが、涼気は激突して墜落。相手のパイロットは即死したが、ロジャーは軽傷を負っただけだった。早くも明日のレースに心を奪われているロジャーは、オーどの持つ廃品同様の飛行機に目をつけた。オードが自分の妻ラバーンに好色な目を注いでいるのを見て取ったロジャーは、彼女に自らの肉体で、オードのオンボロ飛行機を手に入れるように言い含めた。ロジャーのやり方に激怒したジッグスは、絶好を宣言するが、結局はロジャーに威圧されて、明日までに飛行機を整備することを約束する。
 一方ラバーンに行為を抱いたバークは、彼女を自分の部屋に残してオードを訪ねた。バークは空中レースに名誉を賭けるオードとロジャー、という新聞記事を一面に大きく扱うことを条件に、オードの不要機の提供を申し入れ、それを承知させた。ロジャーは飛行機を手にいれた時、ラバーンが彼の命令に従ったものと思いこみ、良心の咎めを感じた。ジッグスの徹夜の作業で、ボロ飛行機は整備された。しかしジッグスは、たとえ離陸できたとしても、このままだと死を招くのみだとロジャーの無謀をたしなめたが、ロジャーは聞き入れようとはしなかった。
 レース当日、ロジャーはラバーンへの愛情を初めて素直に告白する。幸福な家庭を作ろうと約束し、スタートラインに機を向けた。ロジャー機は他機を抜きトップに踊り出たが、最後の一周にかかったとき故障が起きた。ロジャーは多数の見物人を傷つけまいとして自ら湖中に突っ込み、最期を遂げた。
 失意のラバーンは自棄になってオードの元へ走った。これを知ったバークはオードの家に強引に乗り込み、それを止める。一方新聞社では、バークの記事を改めて見直した編集長が彼を復職させる。
 翌朝シカゴ行きの飛行機に、彼女と息子のジャックを乗り込ませたバークは、2人の間に間もなく新しい生活が始まることを約束するのであった。