近松の三大姦通物の一つ「大経師昔暦」を川口松太郎が劇化したものを依田義賢が脚色。大経師の後妻おさん(香川京子)と手代の茂兵衛(長谷川一夫)の許されざる愛の逃避行。早坂文雄の下座音楽、鳥、風、波の音を擬音で再現した大谷巌の録音が、類稀な音響的時空を醸成し、二人の道行きを彩る。