(あらすじ)
オクラホマ州、ロック・アイランド鉄道沿線に展開する人の業の物語。
機関士のジェフ・ウォーレンは3年の旅の末、街に帰ってきて、友人の機関士アレック・シモンズの横の操縦席に座り、なつかしい路線での帰還に胸を高まらせていた。3年前、アレックの家に下宿していた彼をアレックの細君と、一段と美しくなったヴェラは暖かく迎えた。日本土産の着物をもらう夫妻の娘ヴェラは無邪気に喜び、心中ジェフを慕っていた。
不況ではあったが、ジェフは元通りの機関士に着任した。
一方、彼らも挨拶する程度の知り合いで、同じ鉄道会社に雇われているカール・バックリーは粗野で冴えない中年男。はげた頭の巨漢だが、美しい細君のヴィッキーが彼の生き甲斐だった。貞節な女ではない。カールの想いとは裏腹に、もう彼女は夫婦生活に倦怠感を覚え、帰宅したカールを出迎えるでもなしに、ストッキングをねだるのだった。しかし、その日のカールは会社から解雇同然の咎めを受けて、悩んでいた。すぐにカッとなる彼の気性はずいぶんと問題視されていたのだった。幸い、細君のヴィッキーは会社の実力者ジョンと昔なじみである。カールは遠方にいるジョンに電話して、自分の首をつなげて欲しいと妻に頼んだ。気が進まないヴィッキーだが、しょげて酒を飲む亭主を見るのもいたたまれない。仕方なしに電話して、夫婦そろってジョンのいる町に向かう列車に乗った。友人の家で、ジョンに会いに行った妻を待つカールだが、夕方遅くなっても、ヴィッキーは帰らない。彼は嫉妬心も人一倍だった。やっと帰ってきた妻はまず、職を失わなくて済むという朗報を告げた。しかし普段より一段と、よそよそしい素振りである。問い詰めると、ジョンとの浮気を白状するのだった。頭に血が上ったカールは暴力を加え、ヴィッキーにむりやりジョン宛の手紙を書かせた。手紙はヴィッキーがジョンを旅行に誘い、汽車のコンパートメントで待ち合わせしたいとの内容である。
汽車は走り出した。ジョンの待つコンパートメントにヴィッキーを連れていくカール。その途中通路から、タバコの煙が見える。見られないように注意して、そっと通り過ぎ、ジョンの部屋へ妻と共に入るや否や、カールはナイフでジョンを殺した。呆然となった妻の手を引いて、自分たちの部屋に戻るが、現場にナイフを忘れてきたことに気が付く。しかし、通路には先の男がまだタバコを吸って立っている。カールはヴィッキーに男を誘い出させ、二人がその場所を去った後、ナイフを取りに戻った。その男はジェフだった。甘い誘いに乗って、キスをするジェフに戸惑ったヴィッキーは逃げるように自分たちの部屋に戻った。カールは無事ナイフを手にしていた。
ヴィッキーの辛苦の日々が始まった。もはや殺人を犯したカールとの夫婦生活は耐えられない。しかし、何としても妻を手放したくないカールは、例の手紙を握って、もし別れるようなことがあれば、この手紙を公表すると脅した。文面と殺人の状況から、どう見ても犯人はヴィッキーであった。
裁判で、夫婦やジェフを含む当日の乗客の証人喚問が始まった。しかし、意外にもジェフはヴィッキーにあったことを喋らなかった。すでにジェフはヴィッキーに心惹かれていたのだ。そして、ヴィッキーに会い、夫婦生活の内情を聞くに及んで、2人は恋に落ちた。
カンの鋭いヴェラはジェフとヴィッキーの関係を察し、ダンスにジェフを誘うものの、内心は彼をあきらめていた。そして、殺人がカールによるものとヴィッキーから知らされたジェフは、自殺に見せかけたカールの偽装殺人を計画した。彼の決意にヴィッキーは喜ぶのだった。
すでにカールは酒に溺れ、以前に増してみじめな様である。その夜も、千鳥足でバーを出ると、ジェフに尾けられていることも分からず人気のない線路沿いに向かった……。しかし、ジェフは手を下せなかった。そしてヴィッキーのいる部屋に帰ると、自分を扇動して、夫を殺させようとしたとヴィッキーをなじった。そして、酔いつぶれていた彼のポケットから抜き取った手紙を渡した。泣きすがるヴィッキーだが、彼の言うことも半分は否定できなかった。すでにジェフの心から彼女への愛は消えていた。
翌日、ヴィッキーはジェフの操縦する列車に乗り、町を去った。しかし、彼女のコンパートメントに情報を聞きつけ、カールがやってきた。悔悛した、もう酒もやめる、手紙も返す、帰って欲しいと懇願する彼だが、ヴィッキーは冷たくあしらい、ジェフとの浮気、殺人計画、手紙を抜き取った経緯まで全てを話した。ショックに我を失ったカールの両手はヴィッキーの首に伸びた。抵抗も虚しく、すぐにヴィッキーは動かなくなった。
その時、操縦席のジェフはヴェラにもらったダンスパーティのチケットを見て、微笑んでいた。