エンタテインメントとしても、反ナチ映画としても、内容の濃い緊張感に溢れた作品。『死刑執行人もまた死す』『恐怖省』、そして戦後の『外套と短剣』と続くフリッツ・ラングのナチスものの最初の作品である。原作は、映画の冒頭でも断られているようにジェフリー・ハウスホールドの小説「ローグ・メイル」であるが、太平洋戦争のはじまる半年前という時期に作られたこともあり、原作が小説とは思えない切迫した感じのする映画に仕上がった。1941年6月に公開されたこの映画は、『海外特派員』とともにそれまでのアメリカ映画に出てきたことのないナチのリアルなイメージをアメリカの大衆に与え、以後のプロパガンダ映画のあり方に影響を与えた。