歿後20年 映像のアルチザン 松川八洲雄監督特集 上映作品解説

一粒の麦

一粒の麦

1962年|アサヒビール/日本産業映画センター|28分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:佐藤昌道|微速度撮影:鈴木喜代治|音楽:間宮芳生|ナレーション:八木治郎|監修:加納竜一|製作:田代博茂

ビールの原料となる二条大麦。播種から収穫までその品種改良の試行錯誤を追い、遺伝の仕組みも映像で解説する科学映画。毎日産業映画コンクール大賞を受賞し、松川曰く「僕の職人としての最初の映画歴を飾ってくれた」。

味の王様

味の王様

1963年|キッコーマン/日本産業映画センター|24分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:木塚誠一|照明:内藤伊三郎|録音:丸山国衛|音楽:山本直純|ナレーション:黒柳徹子|製作:田代博茂

猿の群れにショートケーキを与えてみたり、各国の料理を覗いてみたり。黒柳徹子と山本直純の軽快な語りと音楽が誘う、味覚をめぐる文明論。後半は一転、醤油工場での製造過程を紹介し、日本に止まらぬ製品の普及もアピール。

ラス・メニナス

ラス・メニナス
1964年毎日新聞社主催ピカソ展より

1964年|毎日新聞社/毎日映画社|23分
構成・演出:松川八洲雄|撮影:野見山務|照明:村瀬栄一|音楽:松村禎三|ナレーション:小沢栄太郎|製作:対馬好武

ベラスケス作「宮廷の侍女たち」をピカソが自由に解釈して描いた連作。その「宮廷」の扉の向こうに広がる「ピカソの空間」へと迫る試み。映像は絵画作品のディテールだけで構成。ナレーションはピカソの言葉にもとづく。

鳥獣戯画

鳥獣戯画

1966年|七人の会、映像社|25分
演出:松川八洲雄|脚本:大沼鉄郎、杉山正美、杉原せつ、富沢幸男、藤原智子、松川八洲雄|撮影:瀬川浩|照明:久米光男|録音:大橋鉄矢|音楽:間宮芳生|ナレーション:芥川比呂志|タイトル:粟津潔|企画:藤原智子|製作:富沢幸男、堀田正巳

国宝「鳥獣戯画」の細部接写映像がリズムよくつながれ、間宮芳生の楽曲が多声を響かせる。仲間たちとの自主作品にして、べルガモ映画祭大賞を獲得。本作をきっかけに松川は絵コンテの切り貼りによる編集方法を活用していく。

今は昔 しのとおきな

今は昔 しのとおきな

1968年|東海テレビ|39分
構成:松川八洲雄、江野雄二|撮影:中島洋|照明:礒部洋治、田所永光|音楽:間宮芳生|ナレーション:宇野重吉|製作:田中信之

桃山時代の志野焼を復活させた人間国宝・荒川豊蔵を描く。手の技を凝視するキャメラ。美濃国の「一人の爺さま」をめぐる寓話風の語り。映像と声の双方で記録性と虚構性が折り重なる。冒頭と結尾に蕪村「竹林茅屋図」を配す。

ヒロシマ・原爆の記録

ヒロシマ・原爆の記録

1970年|広島原爆映画製作委員会/日本映画新社|30分
構成:松川八洲雄、小笠原基生|撮影:杉崎理|照明:外山透|録音:福田誠|音楽:間宮芳生|ナレーション:宇野重吉|製作:加納竜一ほか

原爆投下ひと月後に撮影されたフィルム、当時の写真やニューズリール、25年後の現在の光景などを松川曰く「コラージュ」した、証拠資料による映像証言。広島市民と地元報道機関の積極的な協力・支援のもと製作された。

仕事=重サ×距離

仕事=重サ×距離
三菱長崎造船所からのレポート

1971年|三菱重工業長崎造船所/日本リクルートセンター|35分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:瀬川順一|照明:藤來義門|音響デザイン:大野松雄、大橋鉄矢|ナレーション:岸田今日子|製作:江口昭彦

「世界一の造船所」で働く若者たちの一日の作業風景をスケッチし、詩のような語りとインタビューの声を重ねる。松川と名コンビとなるキャメラマン瀬川順一との初の本格的協働。「若き労働者たちに捧げた」作品と松川はいう。

土くれ

土くれ

1972年|隆映社|18分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:楠田浩之、喜屋武隆一郎|音楽:木下忠司|音響:大野松雄|録音:甲藤勇|製作:灰野謙三、木下忠司、楠田浩之、喜屋武隆一郎

彫刻家・木内克(きのうちよし)、その創造の現場に接近する。手早く粘土を捏ねて裸婦像を作り上げるスピード感に倣って、撮影素材22分をほぼそのまま完成作へと編集。松川初のノー・ナレーション。楠田浩之『木内克とその作品』の姉妹作。

JAPAN

JAPAN

1973年|放送番組センター|80分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:立石潔、土橋孝治|照明:宮沢勤|録音:竹上隆夫|音楽:間宮芳生|ナレーション:佐野浅夫、加藤道子|製作:宇根元繁夫ほか

火・水・土・人の四部構成で見せる、この国の風土と社会、産業と暮らし。日本紹介番組の企画公募で選出され、撮影は1年に及んだが、結果的にキー局では放映されず。「美しい日本」像を相対化し、近代化の裏面も描く。

hands 手

hands 手

1975年|モービル石油/ジェイムズ・ベヴァリッジ・アソシエイツ、毎日映画社|30分
演出:松川八洲雄、梶川勝良|撮影:杉崎理|照明:外山透|現地録音:黒須昭|録音:大橋鉄矢|音楽:間宮芳生|製作:ジェイムズ・ベヴァリッジ、岡田弘

人間国宝6人の手仕事を見つめる。正藍染・千葉あやの、雁皮紙・安部栄四郎、型絵染・芹沢銈介、友禅・森口華弘、備前焼・藤原啓、日本刀・宮入行平。それぞれの手業が画面の上で連鎖してゆくノー・ナレーション作品。

飛鳥を造る

飛鳥を造る
法輪寺三重塔といかるが寺の工たくみたち

1976年(1980年改訂)|劇団四季映画社|50分
演出:松川八洲雄|撮影:瀬川順一ほか|録音:甲藤勇|音楽:間宮芳生|音響デザイン:大野松雄|ナレーション:藤野節子|制作進行:眞部猪一|製作:宮島春彦ほか

戦時中に落雷で焼失した法輪寺三重塔を、飛鳥時代の工法で復元・再建する。棟梁は法隆寺の宮大工・西岡常一。プロジェクトに尽力した作家・幸田文の姿も。2年ほど撮影が進んでいた段階で松川と瀬川が引き継ぎ完成させた。

不安な質問

不安な質問

1979年|たまごの会・映画委員会|85分
構成・演出:松川八洲雄|撮影:瀬川順一|素人撮影:松川八洲雄、古山恵一郎|録音:弦巻裕|音楽:間宮芳生|製作:松川義子、湯浅欽史、武田哲夫

安全な食を求めた都市生活者たちが自ら茨城に農場を建て、自給生活を送りつつ収穫物は郊外へ配送もする。その「たまごの会」の活動を5年にわたって記録。食と農と現代文明を問う。制作中の仮題は『ユートピア闘争宣言』。

琵琶湖・長浜 曳山まつり

琵琶湖・長浜 曳山まつり

1985年|ポーラ伝統文化振興財団/英映画社|32分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:江連高元|照明:前田基男|録音:加藤一郎|ナレーション:原ひさ子|監修:高橋秀雄|製作担当:内海穂高|製作:服部悌三郎、宮下英一

古くから交通の要所として栄えた近江長浜の春ごとの祭は、山車に設えた舞台を使った子ども歌舞伎で有名。男児らの「義経千本桜 吉野山道行」稽古風景から当日喝采を浴びる姿までを追う。児童が主役の民俗芸能とその伝承。

花の迷宮

花の迷宮
小原豊雲の世界

1986年|小原流/岩波映画製作所|32分
構成・演出:松川八洲雄|撮影:八幡洋一|照明:松橋仁之|録音:弦巻裕|音楽:間宮芳生|製作:田村恵

戦後の前衛いけばな界の一翼を担った小原流三世家元・小原豊雲(おはらほううん)。植物を素材とした造形作品として幻想的な花の世界を作り出す豊雲の制作現場を接写し、ヒエロニムス・ボスの絵画を引き寄せながら、その綺想へと迫る。

ガウディへの旅

ガウディへの旅
世紀を超えた建築家

1989年|東海テレビ|65分
構成:松川八洲雄|ディレクター:阿武野勝彦|撮影:中島洋、門脇康郎|音楽:間宮芳生|ナレーション:奥田瑛二|製作:髙松良丸

ユートピアを建築の形で現わそうとしたガウティの生涯を、その背景たる激動の時代とカタロニアの風土とあわせて描き出す。ランボーの詩のリフレインなど松川のアイディアを生かしつつ、最終的な編集は阿武野が担った。

オオシカの村

オオシカの村

1993年|東海テレビ|64分
監督:松川八洲雄|撮影:中島洋|音楽:間宮芳生|ナレーション:佐藤オリエ|製作:国分道雄

村民らが演じる大鹿歌舞伎でも知られる山あいの村。過疎化が進行する傍らで、織物作りや田植えに励むチェコ人にイギリス人、都会を逃れてきたシンガーソングライターといった面々が住み着いている。大鹿村は松川の父の故郷。

ムカシが来た

ムカシが来た
横浜市長屋門公園古民家復元の記録

1993年|横浜市緑政局・都市計画局、農村・都市計画研究所、ビーコ・プランニング|46分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:瀬川順一、柳田義和|照明:外山透|音楽:杉山洋一|音響デザイン:弦巻裕|ナレーション:浜美枝|監修:青木志郎、稲葉和也|製作:奥村玄

江戸時代の古民家を横浜市の隣区から長屋門公園へ復元移築する事業を記録。伝統的家屋の建築方法、素材、道具、職人の技を見つめる。ラストに種名が列挙される「蝶」は松川が偏愛した対象。瀬川順一と組んだ最後の作品。

オイシサをつくる

オイシサをつくる
発酵の魅力

1996年|雪印乳業/桜映画社|34分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:黒柳満|照明:小山勲|音楽:間宮芳生|音響デザイン:弦巻裕|ナレーション:山口果林|監修:小泉武夫、平野雅章|製作:村山英世

東南アジアから伝播した稲作は発酵文化もまた日本へともたらし、西アジアの遊牧民族は乳の発酵を発明し、ヨーロッパでは地方ごとのカビが特色あるチーズを生んだ。発酵という調理法と食文化をめぐる世界紀行。

神々のふるさと 出雲神楽

神々のふるさと 出雲神楽

2002年|ポーラ伝統文化振興財団/英映画社|41分
演出:松川八洲雄|脚本:菅野均|撮影:小林治、八幡洋一|照明:前田基男、北沢保夫|録音:弦巻裕、松本修、南徳修|ナレーション:北村昌子|監修:高橋秀雄|製作担当:内海穂高|製作:宮下英一

カミとヒトの交流の祭たる神楽。出雲地方の4つの神社での神楽奉納を活写する。同じ「スサノオのヤマタノオロチ退治」でも郷土色の違いがあざやかで、舞台に上がる幼児やら神楽に目もくれず酒を酌み交わす見物客やらも。

マイ・ブルー・ヘブン

マイ・ブルー・ヘブン
吉野作造 デモクラシーへの問い…

2002年|紀伊國屋書店/ポルケ、桜映画社|44分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:八幡洋一|録音:甲藤勇|音楽:山崎宏|ナレーション:北村昌子、伊藤惣一|監修:松本三之介|製作:村山英世

民本主義を唱え、大正デモクラシーの立役者となった政治学者・吉野作造。論説・講演で民衆本位の政治を説いては女性の政治意識も促し、大学を辞すと明治期研究に没頭する。そして吉野が生きた時代はテロルの季節でもあった。

熊野古道

熊野古道

2006年|三重県/英映画社|16分
脚本・演出:松川八洲雄|撮影:八幡洋一|録音:甲藤勇、弦巻裕|音楽:間宮芳生(『花の迷宮』より)|音響デザイン:山崎宏|ナレーション:北村昌子|製作:宮下英一、内海穂高

2004年に世界遺産に登録された熊野古道を県の依頼で撮影。46億年前の地球誕生から語り起こされる森と人類の関係。豊かな生態系をかかえた熊野の森は、人々が極楽浄土を願う霊場としてあり続ける。松川八洲雄の遺作。

 ◉全作品デジタル上映