現代ポルトガル映画を代表する女性監督
リタ・アゼヴェード・ゴメス監督特集
2025年12月18日(木)―20日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター
巨匠マノエル・ド・オリヴェイラをはじめとする傑出した映画作家を輩出してきたポルトガル映画。オリヴェイラ監督作『フランシスカ』で助手を務め、その後、独自の歩みを続けてきた女性監督リタ・アゼヴェード・ゴメスは最新作『Fuck the Polis』で今年のマルセイユ国際映画祭でグランプリを受賞。ポルトガル映画のもうひとりの映画作家として注目を集めている。これまで映画祭などで上映されてきた『ポルトガルの女』『変ホ長調のトリオ』に加え、同監督の代表作と言われる『ある女の復讐』を日本初上映。初日にはゲストによる対談を、最終日には監督とのオンライントークを実施する。
■上映スケジュール
12月18日(木)
| 14:20 | 『ある女の復讐』[100分] |
| 16:10 | トーク: 中条省平(フランス文学者、映画批評家)+筒井武文(映画監督) |
| 18:00 | 『ポルトガルの女』[136分] |
12月19日(金)
| 16:00 | 『変ホ長調のトリオ』[127分] |
| 18:40 | 『ポルトガルの女』[136分] |
12月20日(土)
| 14:10 | 『変ホ長調のトリオ』[127分] |
| 16:50 | 『ある女の復讐』[100分] |
| 19:00 | オンライントーク: リタ・アゼヴェード・ゴメス監督[ポルトガル語‐日本語逐次通訳] 司会:赤坂太輔(映画批評家) |
■上映作品

ある女の復讐 【日本初上映】
A Vingança de Uma Mulher
2012年|ポルトガル|100分|デジタル版
監督・脚本:リタ・アゼヴェード・ゴメス
原作:ジュール・バルベー・ドールヴィイ
撮影:アカシオ・ド・アルメイダ
出演:リタ・ドゥラン フェルナンド・ロドリゲス ウーゴ・トゥリータ
イザベル・ルート
時代は19世紀、放蕩的な生活を送るロベルトは、ある娼婦と出会う。彼女は、かつてシエラレオネ公爵の妻であったという事実をロベルトに明かす。娼婦は公爵夫人だった時代、夫のいとこと交わした禁じられた恋、悲劇、そして復讐の物語を語っていく。バルベー・ドールヴィイの原作を15年余の時をかけて映画化し、意図的にカメラ前の演劇の上演を示す演出とアカシオ・ド・アルメイダの美しい撮影、リタ・アゼヴェード・ゴメス作品の常連リタ・ドゥランの力強い演技によって、ポルトガル映画を代表する女性映画と評価される。

ポルトガルの女
A Portuguesa
2018年|ポルトガル|136分|デジタル版
監督:リタ・アゼヴェード・ゴメス
原作:ロベルト・ムージル
脚本:アグスティナ・ベッサ゠ルイス
撮影:アカシオ・デ・アルメイダ
出演:クララ・リーデンシュタイン マルセロ・ウルジェージェ
イングリット・カーフェン リタ・ドゥラン ピエール・レオン
オーストリアの作家ロベルト・ムージルの小説を、マノエル・ド・オリヴェイラ『アブラハム渓谷』等のアグスティナ・ベッサ゠ルイスが脚色した華麗なコスチュームプレイ。フォン・ケッテン侯爵夫人は、夫が戦場へ赴き、周囲に気遣われて10年以上長い歳月を離れて過ごす間、夫のいないイタリアの城での生活を、読書、歌、踊り、水泳、森での乗馬といった自立した生活へと変えていく。ダニエル・シュミット作品のミューズ、イングリット・カーフェンがここでも「天使」的な存在で歌声を披露。
変ホ長調のトリオ
O Trio em Mi Bemol
2022年|ポルトガル、スペイン|127分|
デジタル版
監督:リタ・アゼヴェード・ゴメス
原作:エリック・ロメール
脚色:ルノー・ルグラン
撮影:ジョルジェ・キンテラ
出演:リタ・ドゥラン ピエール・レオン
アドルフォ・アリエッタ オリビア・カベッサ
別れてから一年経つもののその後も親しい男女の行方、映画の撮影に悩む映画監督と助手、モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ(ピアノ、クラリネットとヴィオラのための三重奏曲 変ホ長調 K.498)」の三つの要素が交錯し、三重奏曲を演奏するように展開する。エリック・ロメールの書いた戯曲をコロナ流行時の困難にもめげず映画化。スペインのフランコ独裁政権時代にフランスへ亡命し活動を続ける映画作家アドルフォ・アリエッタが監督役で登場している。
■監督紹介

photo by Miguel Baltazar
リタ・アゼヴェード・ゴメス
Rita Azevedo Gomes
1952年リスボン生まれ。現代ポルトガル映画を代表する女性監督。
マノエル・ド・オリヴェイラ『フランシスカ』(1981)、ヴェルナー・シュレーター『薔薇の王国』(1986)等の撮影に助手として参加。演劇やオペラの衣装や美術を担当。グルベンキアン財団の映画部門、1993年からはポルトガルのリスボンにあるシネマテークで勤務、映画カタログや映画関連出版物のグラフィックデザインを手がけたことがある。
監督としての長編第1作は1990年の『O Som da Terra e Tremer』で、次作は11年後に完成した『Frágil Como o Mundo』(2001)。第3作目の『ある女の復讐』(2012)で国際的に評価され、詩人たちの往復書簡を映像化した『Correspondências』(2017)の後、『ポルトガルの女』(2018)がラス・パルマス映画祭で最優秀国際映画賞を受賞。ピエール・レオン、ジャン・ルイ・シェフェールと共同監督した絵画論映画『Danses macabres, squelettes et autres fantaisies』(2020)、エリック・ロメールの戯曲の映画化『変ホ長調のトリオ』(2022)と続き、最新作はマルセイユ国際映画祭グランプリ受賞作『Fuck the Polis』(2025)。オリヴェイラ以来のポルトガル映画の伝統を受け継ぎながら、自由なフォーマットで独自の映画美学を探求する姿勢は作品ごとに注目を集めている。




