1984年の秋にアラバマ聾盲学校(AIDB)で行った撮影の結果、一本の映画にまとめることは不可能だと判断したワイズマンは、約九時間の長編としても成立する四部作として「Deaf and Blindシリーズ」を完成させた。第一部となる本作は、視力をもたない子どもたちの盲学校での日常を、技法的な編集を極力排して丹念に描き出していく。
アラバマ聾盲学校(AIDB)を取材した「Deaf and Blindシリーズ」第二部。聾学校で寄宿生活を送る子どもたちの記録。口頭での会話、聴覚補助、読唇術、筆読などと手話を組み合わせて使うトータル・コミュニケーションによる教育、心理カウンセリング、通常の学科の授業、職業訓練やレクレーションなど、この学校の中で行われる様々な活動が記録されている。
「Deaf and Blindシリーズ」第三部では、AIDB内のE.H.ジェントリー技術訓練校の日常をとらえる。盲学校、聾学校を終えた人や、成人後に障害をもった人が、生活のための訓練や、社会の一員として自立していくための様々な技術の修得を行っている。自らの能力の限界に焦りや絶望を示す者がある一方、「適応」を終えた人々が作業場で仕事に打ち込む様子は圧倒的な活気に満ちている。
「Deaf and Blindシリーズ」最終章の舞台であるAIDB内のヘレン・ケラー校は、多重障害や知覚障害の生徒に教育と訓練を施すことを目的としている。盲かつ聾唖の人に加え、盲の多重障害、聾唖の多重障害という三種類の生徒が学んでいる。重度の障害をもつ生徒には念入りな個別指導が行われ、比較的障害の軽い生徒は集団で知育道具や日用品を使ったトレーニングに励む。
カリフォルニア州ヴァンデンバーグの空軍基地で行われていた大陸間弾道ミサイルの打上げ管制センターに配属される空軍将校の訓練を記録している。戦略航空軍団第4315訓練艦隊に焦点を当て、核戦争についての道徳的、軍事的議論、ミサイルの装備・標的・発射、暗号、通信、テロリストの攻撃からの防衛、緊急体制、職員会議、個人指導などが描かれる。
ボストンのベス・イスラエル病院特別医療班についての映画。尊厳死、植物人間、脳死、インフォームド・コンセント、インフォームド・チョイスなど、死と生の境界をめぐる末期医療の新しい問題を臨床現場から掘り起こした6時間に及ぶ超大作。ハーバード大学の付属機関であり、先端の医療技術を誇るこの病院の集中治療棟で行われる生命維持装置を使った診療をめぐり、患者と医者が直面する現実に多角的に迫っている。
ニューヨーク市のランドマークのひとつセントラル・パーク。人々は、さまざまなかたちでこの公園を活用している。ジョギング、ボート遊び、スケートなどのスポーツをする場、散歩、ピクニック、パレード、コンサートなど音楽や演劇の発表の場、映画の撮影も行われている。市の公園課は同公園を維持し、一般に開放するために様々な問題に対処すべく、四六時中、奮闘する。セントラル・パーク自体が、この映画の主人公である。
19世紀には有名な銀鉱山だったアスペン。現在は、風光明媚で、登山、スキーなどのリゾート地、音楽や文化活動の盛んな町、またセレブが住む町として知られる。町の成り立ちを反映するように、自然と人工物、古い価値観とスーパーリッチといった対立がいたるところに見られる。
フロリダ州マイアミのメトロポリタン動物園の日常を記録している。世界中から訪れる入場者、飼育係による動物の世話、獣医の仕事などをとらえる。表面には現れない、寄付を募るパーティや広報活動、調査・研究活動などを紹介しながら動物園が運営されるメカニズムに迫る。
ニューヨークのハーレム地区スペイン語圏にある、『ミュージック・オブ・ハート』の舞台ともなった進学校。革新的教育者デボラ・マイヤーが設立したこの学校が誇るユニークなカリキュラムによる文系、理系の授業、保護者との面談、進路指導、人種、階級、性別についての討論、 教師たちのミーティング、性教育、生徒によるユニークな紛争解決の試み等々、高校生活の様々な場面を映し出す。
ニューヨークに拠点を置く、アメリカを代表するバレエ団「アメリカン・バレエ・シアター」の、1992年のアメリカン・バレエ・シアターの活動を記録している。前半はスタジオでのリハーサル風景やバレエ団の運営に関わる活動を、後半はアテネ公演、コペンハーゲン公演の様子を追う。作品を完成させるために繰り返される振付家とダンサーたちのリハーサルの様子や、アクロポリス、コペンハーゲン国立劇場という荘厳な舞台での華麗な公演風景は見るものを魅了する。
歴史と伝統を誇るフランスの国立劇団「コメディ・フランセーズ」の全貌を映し出した作品。企画会議から舞台のリハーサル風景、劇場の全景、演出家や俳優たちの表情、楽屋裏の様子、経営委員会や劇団の年金制度をめぐる会議に至るまで、克明に描き出す。ラシーヌの「ラ・テバイット」モリエールの「ドン・ジュアン」など、四つの芝居の模様が部分的に記録されている。
シカゴ郊外の公共住宅供給事業の記録。貧しい居住者のほとんどが黒人である公共住宅の日常。管理組合の運営、警察の役割、住宅内で行われる職業訓練、青少年のための放課後の活動や託児所の運営といった公共住宅のプログラムや、10代の母親たち、崩壊した家庭、老人問題など、公共住宅が抱える問題を描く。
メイン州にある人口6000人の典型的なアメリカの町ベルファスト。現在ではメイン州でもっとも貧しい地区のひとつであるが、歴史的には商業的に栄えた町であり、天然資源に恵まれた土地でもある。ワイズマンは「ベルファストの日常生活が経済的圧力によっていかに変化したか、あるいは変化していないかを記録しようと考え、この町の様々な組織とそこでの日常生活を検証した」と述べている。
フロリダ州最大のDV被害者保護施設「スプリング」は年間1650人もの成人と子どもを受け入れている。経済的抑圧、精神的・肉体的虐待、性的虐待…。加害者は故意に被害者を傷つけ、支配しようとする。なぜ家族がお互いを傷つけあうのか、なぜ被害者は傷つけられることを許してしまうのか。映画に映し出される現実は我々を驚かせ、この問題について我々が抱いているステレオタイプを覆していく。
前作が被害者救援施設を舞台に、主にDVの被害者の立場から話が展開していたのに対し、本作では視点をDVの加害者側に移している。法廷で様々なDVのケースが処理されていく。当事者同士の接触を避けるため、加害者はモニターに映し出されるだけの法廷。何組もの被害者と加害者が登場し、審理が進められていく法廷。延々と映し出されるいくつもの裁判。法廷審理から彼らの人生とドラマが浮かび上がる。
ワイズマンが、コメディ・フランセーズの女優カトリーヌ・サミィのために脚色した、ワシーリー・グロスマンの小説「人生と運命」の一章を映画化したもの。1941年のウクライナ、ゲットーのユダヤ人たちはナチによって全員殺されることになった。迫りくる恐怖の中、年老いた女医アンナ・セミョーノワは、ナチの手を逃れた息子に宛てた手紙を口述筆記する。ゲットーでの生活を詳察し、自分の人生を振り返り、死と立ち向かう、この女性の恐怖、勇気、弱さ、そして威厳が浮かび上がる。
アイダホ州、州議会の日常を追う。壮麗な州議会の建物の中では、校内暴力、狂牛病、間接喫煙の規制緩和、電話料金等々、多様な問題を扱う様々な委員会が行われている。委員会には議員だけでなく、ロビイスト、それぞれの問題の専門家や関係者、一般の市民も参加する。様々な課題をめぐり果てしなく続けられる議論の合間に、州議会を見学に訪れる子どもたち、ロビーで行われるコンサートの模様などが挿入される。
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世界でもっとも早く生まれたバレエ団を抱えるパリ・オペラ座。このバレエの殿堂で、カメラは奈落から屋上まであらゆる場に入りこみ、ダンサーたちはもちろん、バレエ団トップのルフェーヴル女史、振付家、ベテランダンサーの教授陣から、演奏家、衣装係、舞台美術、照明係などの裏方たちまで様々な活動を映し出す。リハーサルや本番のシーンを通して紹介されるバレエは、マクレガー、プレルジョカージュ、エク、ラコット、ヌレエフ、バウシュ、ヴァルツら振り付けによる作品群。
舞台はテキサス州オースティンのボクシング・ジム。元プロボクサー、リチャード・ロードが16年前に開いたローズ・ジム(ロードのジム)である。ここには年齢・人種・職種・性別などの違う様々な人々がやってくる。大人も子供も男も女も、プロを目指す者もスポーツ好きなアマチュアも体力をつけたい青少年も、医者、弁護士、裁判官、ビジネスマン、移民、それにプロボクサーも。ボクシング・ジムは、人々が出会い、話し、鍛える、人間のるつぼ・・・。まさにアメリカそのものだ。
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ムーラン・ルージュ、リドと並ぶパリの三大ナイトショーのひとつクレージーホース。2010年、クレージーホースでは、フィリップ・ドゥフクレの振付による新作ショーの準備が進められている。ショーのためのリハーサル、メイクアップ、衣装の製作、オーディション、運営会議、また、支配人や演出家らがインタビューを受ける様子などを記録。ダンサー達の完璧なボディと緻密に計算された音と光の演出でパリを魅了してきたクレージーホースの全貌を描き出す。
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ダ・ビンチ、モネ、ゴッホ、ミケランジェロなど名作を擁し、“世界最高峰”と賞される英国の国立美術館「ナショナル・ギャラリー」。学芸員によるギャラリートークやワークショップ、館内ツアー等の表の活動、さらに丹念な修復作業や閉館後に行われる展示や照明のチェック、運営や広報のための会議等、美術館内部で行われる様々な作業を記録する。ティツィアーノの絵画の前で、二人のプリンシパルが幻想的な踊りを繰り広げる英国ロイヤル・バレエ団との華麗なコラボレーションは圧巻。