マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかがさまざまな側面から記録されている。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品。永年にわたる裁判の末、91年にようやく上映が許可された。
フィラデルフィア郊外にある“模範的な”高校の日常を追っている。朝のホームルーム、授業の風景、生活指導、父母を交えた進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動……。高校を構成する教師、生徒、親、管理職たちの関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられていく。
ミズーリ州カンザス・シティの、最も犯罪率の高いアドミラル・プールヴァール管轄区にある警察の様々な活動を追っている。売春の摘発、未成年犯罪者や拳銃を所持する窃盗犯の逮捕など緊迫した状況を追う一方で、老女のバッグ探しや迷子の保護、養育権をめぐる夫婦のいさかいの仲裁など、市民生活のあらゆる側面に関わる警察の活動をとらえている。
ニューヨーク市、ハーレムにある大きな都市病院、メトロポリタン病院の活動を緊急棟と外来患者診療所に焦点を当てて記録した作品。病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員とのやりとりを通して都市が抱える多くの問題を浮かび上がらせる。
ケンタッキー州フォートノックスの基地で行われる新兵を育成するための基礎訓練の様子を描く。行進や格闘、射撃や銃の使い方を学ぶ教練、生活指導、イデオロギー教育やカウンセリング等々を通して、まだ子どもっぽさの抜けない若者が兵士に仕立て上げられていく。ベトナム戦争の最中に撮影された。
テネシー州メンフィスにある少年裁判所を撮った作品。罪を犯した少年を裁く訴追側や裁判官だけでなく、少年側に立つ弁護士やソーシャル・ワーカーにとってでさえ、各事件はあくまで膨大な日常業務の流れの中にあるという事実が冷静に積み重ねられてゆく。次々に捌かれてゆく事件の合間で、裁かれる少年の切実な表情が目を射る。
ニューヨーク市のウェイヴァリー福祉センターを舞台に福祉行政のありようを描いた作品。住宅問題、失業問題、医療問題、幼児虐待などの児童問題、老人問題など、多様な問題と係わる福祉システムの性質を検証し、福祉活動家の置かれている状況、受益者の問題、福祉の本質などを浮かび上がらせる。
永年、事実上アメリカの植民地だったパナマ運河地帯。1977年にカーター大統領は新運河条約を締結し、運河を米パ両国で共同管理することを決めた。政府関係者、軍人、ビジネスマンなどなど、この地帯で暮らす様々な“アメリカ人”の生活が描かれる。同地帯は1999年12月31日にパナマに完全返還された。
1973年10月第四次中東戦争が終結し、第二次シナイ協定に基づき、エジプトとイスラエルの間のシナイ緩衝地帯に米国シナイ半島監視団が置かれた。灼熱の砂漠の中の小隊。“アメリカの外のアメリカ”として“アメリカらしさ”が奇妙に凝縮されたこの場所を、ワイズマンは広大な砂漠のごく小さな一点として映像に収めている。
世界屈指のサラブレットの競馬場、ニューヨークのベルモント競馬場についてのドキュメンタリー。厩舎での馬の出産から始まり、調教師や飼育係、馬主、獣医たちの活動、レースをとりまく人々、観客たち、騎手たち、この競馬場の経営を支えるオーナーたちの巨大なパーティとその舞台裏まで、競馬というビジネスのあらゆる側面が映し出される。
カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われる、ICBM(大陸間弾道ミサイル)打上げ管制センターに配属される空軍将校の訓練を記録している。戦略航空軍団第4315訓練艦隊に焦点を当て、核戦争についての道徳的・軍事的議論や、ミサイルの装備、発射、暗号、通信、テロリストの攻撃からの防衛、緊急体制等に関する講義や訓練、職員会議、個人指導などが描かれる。
ニューヨーク市のランドマークのひとつセントラル・パーク。人々は、様々なかたちでこの公園を活用する。ジョギング、ボート遊び、スケートなどのスポーツ、散歩、ピクニック、パレード、コンサートなど音楽や演劇の発表、映画の撮影も行われる。市の公園課はここを維持し、一般に開放するために様々な問題に対処すべく奮闘する。
19世紀には有名な銀鉱山だったコロラド州アスペン。現在は風光明媚な登山、スキーなどのリゾート地、音楽や文化活動の盛んな町、またセレブが住む町として知られる。町の成り立ちを反映するように、自然と人工物、古い価値観とスーパーリッチといった対立がいたるところに見られる。
フロリダ州マイアミのメトロポリタン動物園の日常を記録している。世界中から訪れる入場者、飼育係による動物の世話や獣医の仕事、また、表面には現れない、寄付を募るパーティや広報活動、調査・研究活動などを紹介しながら動物園が運営されるメカニズムに迫る。
ニューヨーク、マンハッタンのスパニッシュ・ハーレム地域にある、『ミュージック・オブ・ハート』の舞台ともなった進学校セントラル・パーク・イースト高校。革新的教育者デボラ・マイヤーの理念に基づくユニークなカリキュラムによる授業、保護者との面談、進路指導、人種、階級、性別についての討論、 教師たちのミーティング、性教育、生徒によるユニークな紛争解決の試み等々、高校生活の様々な場面を映し出す。
ニューヨークに拠点を置くアメリカを代表するバレエ団「アメリカン・バレエ・シアター」の1992年の活動を記録。前半はスタジオでのリハーサル風景やバレエ団の運営に関わる活動を、後半はアテネとコペンハーゲンでの公演を追う。振付家とダンサーたちのリハーサルの様子や、アクロポリス、コペンハーゲン国立劇場という荘厳な舞台での華麗な公演風景は見るものを魅了する。
シカゴ郊外の公共住宅供給事業の記録。居住者のほとんどが貧しい黒人である公共住宅の日常。管理組合の運営、警察の役割、住宅内で行われる職業訓練、青少年のための放課後の活動や託児所の運営といった公共住宅のプログラムや、10代の母親たち、崩壊した家庭、老人問題など、公共住宅が抱える問題を描く。
メイン州にある人口6500人の典型的なアメリカの町ベルファストに関するドキュメンタリー。現在ではメイン州でもっとも貧しい町のひとつであるが、かつては商業的に栄えた町であり、天然資源に恵まれた土地でもある。ワイズマンは「ベルファストの日常生活が経済的圧力によっていかに変化したか、あるいは変化していないかを記録しようと考え、この町の様々な組織とそこでの日常生活を検証した」と述べている。
フロリダ州タンパにあるDV被害者保護施設「スプリング」は年間1650人もの成人と子どもを受け入れている。経済的抑圧、精神的・肉体的虐待、性的虐待…。加害者は被害者を傷つけ、支配しようとする。なぜ家族がお互いを傷つけあうのか、被害者は傷つけられることを許してしまうのか。映画に映し出される現実は、この問題について我々が抱いているステレオタイプを覆していく。
前作が被害者救援施設を舞台としたのに対し、本作ではDVが裁かれる法廷に舞台を移す。当事者同士の接触を避けるため、加害者はモニターに映し出されるだけの法廷。何組もの被害者と加害者が登場し、次々に様々なDVの審理が進められる。延々と映し出されるいくつもの裁判。法廷審理から彼らの人生とドラマが浮かび上がる。
ワイズマンが、コメディ・フランセーズの女優カトリーヌ・サミィのために脚色したワシーリー・グロスマンの小説「人生と運命」の一章を映画化した作品。1941年のウクライナ、ゲットーのユダヤ人はナチによって全員殺されることになった。年老いた女医アンナ・セミョーノワは、息子に宛てた手紙を口述筆記する。自分の人生を振り返り、死と立ち向かう女性の恐怖、勇気、弱さ、そして威厳が浮かび上がる。
アイダホ州州議会の日常を追う。壮麗な州議会の建物の中では、校内暴力、狂牛病、間接喫煙の規制緩和、電話料金等々、多様な問題を扱う多数の委員会が開かれている。委員会には議員だけでなく、ロビイスト、それぞれの問題の専門家や関係者、一般の市民も参加する。果てしなく続けられる議論の合間に、州議会を見学に訪れる子どもたち、ロビーで行われるコンサートの模様などが挿入される。
世界でもっとも早く生まれたバレエ団を抱えるパリ・オペラ座。カメラは奈落から屋上まであらゆる場に入りこみ、ダンサーたちはもちろん、バレエ団トップのルフェーヴル女史、振付家、ベテランダンサーの教授陣から演奏家、衣装係、舞台美術、照明係などの裏方たちまで様々な活動を映し出す。
テキサス州オースティンにある元プロボクサー、リチャード・ロードが開いたボクシング・ジム「ローズ・ジム」。ここには様々な人々がやってくる。大人も子どもも男も女も、プロを目指す者もスポーツ好きなアマチュアも、医者、弁護士、裁判官、ビジネスマン、移民、プロボクサーも。ローズ・ジムは、人々が出会い、話し、鍛える、人間のるつぼ…。アメリカそのものだ。
「ムーラン・ルージュ」、「リド」と並ぶパリの三大ナイトショーのひとつ「クレージーホース」。2010年、フィリップ・ドゥフクレの振付による新作ショーの準備が進められている。リハーサル、メイクアップ、衣装の制作、オーディション、運営会議等を記録。ダンサーの完璧なボディと緻密に計算された音と光の演出でパリを魅了してきたクレージーホースの全貌を描き出す。
ワイズマンが“大学”を撮った作品。カリフォルニア大学バークレー校は、1868年に創設された州立カリフォルニア大学の発祥地であり、アメリカで最も古く権威のある総合大学である。世界有数の研究教育機関であり、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。研究教育機関として知的・社会的使命を果たすための授業や研究活動、大学構内で行われる学生たちの様々な活動、スポーツイベントやコンサート。また、大学を維持・管理・経営するための無数の会議や行政との折衝など、大学で行われるあらゆる活動を追っている。
ダ・ヴィンチ、モネ、ゴッホ、ミケランジェロなど名作を擁し、“世界最高峰”と賞される英国「ナショナル・ギャラリー」。ギャラリートークやワークショップ、館内ツアーや、丹念な修復作業、閉館後に行われる展示や照明のチェック、運営会議等々、美術館で行われる様々な活動を記録する。
ニューヨーク市クィーンズ区の北西に位置する、ニューヨークで最も多様性に富む町“ジャクソンハイツ”。南アメリカ、メキシコ、バングラデシュ、パキスタン、アフガニスタン、インド、中国等々の移民たちが住み、167の言語が話される。ワイズマンは、この町に生きる人々、商店主たち、LGBTの人々、ボランティア、老人たち、子どもたち、不法滞在者等々の多様な姿を、生き生きと彩り豊かに捉えている。
世界有数の図書館である「ニューヨーク公共図書館」の舞台裏に迫る。膨大な書籍や資料を保有し、すべての市民に提供するこの図書館は、個人の知る権利、情報を受け取る権利を守るアメリカの民主主義の理念を体現する場でもある。「政治情勢がどうであれ、この図書館は今なお、社会的包摂、民主主義、表現の自由のひとつの理想形であり続けている。」
2016年のアメリカ大統領選の結果を受けて、ワイズマンはアメリカ中西部インディアナ州の農業の町モンロヴィアを題材に選んだ。牧歌的な農場の風景にはじまり、フリーメーソンのロッジ、ライオンズクラブ、高校、教会、銃砲店などを細やかに観察しながら、昔ながらの価値観、生活様式を護り続ける“善きアメリカ人”の姿を浮かび上がらせる。(山形国際ドキュメンタリー映画祭ウェブサイト参照)