マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかがさまざまな側面から記録されている。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品。永年にわたる裁判の末、91年にようやく上映が許可された。
フィラデルフィア郊外にある“模範的な”高校の日常を追っている。朝のホームルーム、授業の風景、生活指導、父母を交えた進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動……。高校を構成する教師、生徒、親、管理職たちの関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられていく。
ミズーリ州カンザス・シティの、最も犯罪率の高いアドミラル・プールヴァール管轄区にある警察の様々な活動を追っている。売春の摘発、未成年犯罪者や拳銃を所持する窃盗犯の逮捕など緊迫した状況を追う一方で、老女のバッグ探しや迷子の保護、養育権をめぐる夫婦のいさかいの仲裁など、市民生活のあらゆる側面に関わる警察の活動をとらえている。
ニューヨーク市、ハーレムにある大きな都市病院、メトロポリタン病院の活動を緊急棟と外来患者診療所に焦点を当てて記録した作品。病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員とのやりとりを通して都市が抱える多くの問題を浮かび上がらせる。
ベネディクト会エッセネ派の僧院の日常を追う。個人の欲求と組織としての論理の対立、規則、労働、信仰、価値、愛、そして祈り。日々の生活の中で修道士たちが直面する問題は特別なものではなく、“組織”というものが抱え込まざるをえない共通の問題であることが見えてくる。
1984年の秋にアラバマ聾盲学校(AIDB)で行った撮影の結果、一本の映画にまとめることは不可能だと判断したワイズマンは、約九時間の長編としても成立する四部作として「Deaf and Blindシリーズ」を完成させた。第一部となる本作は、視覚障害の子どもたちの盲学校での日常を、技法的な編集を極力排して丹念に描き出していく。
「Deaf and Blindシリーズ」第二部。聾学校で寄宿生活を送る子どもたちの記録。口頭での会話、聴覚補助、読唇術、筆読などと手話を組み合わせて使うトータル・コミュニケーションによる教育、心理カウンセリング、通常の学科の授業、職業訓練やレクリエーションなど、この学校の中で行われる様々な活動が記録されている。
「Deaf and Blindシリーズ」第三部では、E.H.ジェントリー技術訓練校の日常をとらえる。盲学校、聾学校を終えた人や、成人後に障害をもった人が、生活のための訓練や、社会的に自立するための様々な技術の修得を行っている。自らの能力の限界に焦りや絶望を示す者がある一方、「適応」を終えた人々が作業場で仕事に打ち込む様子は圧倒的な活気に満ちている。
「Deaf and Blindシリーズ」最終章の舞台であるAIDB内のヘレン・ケラー校は、重複障害(多重障害)や知覚障害の生徒に教育と訓練を施すことを目的としている。目が不自由かつろうあの人に加え、盲重複障害、ろう重複障害という三種類の生徒が学んでいる。重度の障害をもつ生徒には念入りな個別指導が行われ、比較的障害の軽い生徒は集団で知育道具や日用品を使ったトレーニングに励む。
カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われる、ICBM(大陸間弾道ミサイル)打上げ管制センターに配属される空軍将校の訓練を記録している。戦略航空軍団第4315訓練艦隊に焦点を当て、核戦争についての道徳的・軍事的議論や、ミサイルの装備、発射、暗号、通信、テロリストの攻撃からの防衛、緊急体制等に関する講義や訓練、職員会議、個人指導などが描かれる。
ボストンのベス・イスラエル病院特別医療班についての映画。尊厳死、脳死、インフォームド・コンセント、インフォームド・チョイスなど、死と生の境界をめぐる末期医療の問題を臨床現場から掘り起こした6時間に及ぶ超大作。ハーバード大学の付属機関であり、先端の医療技術を誇るこの病院の集中治療棟で行われる生命維持装置を使った診療をめぐり、患者と医者が直面する現実に多角的に迫っている。
ニューヨーク市のランドマークのひとつセントラル・パーク。人々は、様々なかたちでこの公園を活用する。ジョギング、ボート遊び、スケートなどのスポーツ、散歩、ピクニック、パレード、コンサートなど音楽や演劇の発表、映画の撮影も行われる。市の公園課はここを維持し、一般に開放するために様々な問題に対処すべく奮闘する。
19世紀には有名な銀鉱山だったコロラド州アスペン。現在は風光明媚な登山、スキーなどのリゾート地、音楽や文化活動の盛んな町、またセレブが住む町として知られる。町の成り立ちを反映するように、自然と人工物、古い価値観とスーパーリッチといった対立がいたるところに見られる。
フロリダ州マイアミのメトロポリタン動物園の日常を記録している。世界中から訪れる入場者、飼育係による動物の世話や獣医の仕事、また、表面には現れない、寄付を募るパーティや広報活動、調査・研究活動などを紹介しながら動物園が運営されるメカニズムに迫る。
ニューヨーク、マンハッタンのスパニッシュ・ハーレム地域にある、『ミュージック・オブ・ハート』の舞台ともなった進学校セントラル・パーク・イースト高校。革新的教育者デボラ・マイヤーの理念に基づくユニークなカリキュラムによる授業、保護者との面談、進路指導、人種、階級、性別についての討論、 教師たちのミーティング、性教育、生徒によるユニークな紛争解決の試み等々、高校生活の様々な場面を映し出す。
ニューヨークに拠点を置くアメリカを代表するバレエ団「アメリカン・バレエ・シアター」の1992年の活動を記録。前半はスタジオでのリハーサル風景やバレエ団の運営に関わる活動を、後半はアテネとコペンハーゲンでの公演を追う。振付家とダンサーたちのリハーサルの様子や、アクロポリス、コペンハーゲン国立劇場という荘厳な舞台での華麗な公演風景は見るものを魅了する。
歴史と伝統を誇るフランスの国立劇団「コメディ・フランセーズ」の全貌。企画会議から舞台のリハーサル、劇場の全景、演出家や俳優たち、楽屋裏の様子、経営委員会や劇団の年金制度をめぐる会議に至るまで、克明に描き出す。ラシーヌの「ラ・テバイット」、モリエールの「ドン・ジュアン」など、四つの芝居の模様が部分的に記録されている。
シカゴ郊外の公共住宅供給事業の記録。居住者のほとんどが貧しい黒人である公共住宅の日常。管理組合の運営、警察の役割、住宅内で行われる職業訓練、青少年のための放課後の活動や託児所の運営といった公共住宅のプログラムや、10代の母親たち、崩壊した家庭、老人問題など、公共住宅が抱える問題を描く。
メイン州にある人口6500人の典型的なアメリカの町ベルファストに関するドキュメンタリー。現在ではメイン州でもっとも貧しい町のひとつであるが、かつては商業的に栄えた町であり、天然資源に恵まれた土地でもある。ワイズマンは「ベルファストの日常生活が経済的圧力によっていかに変化したか、あるいは変化していないかを記録しようと考え、この町の様々な組織とそこでの日常生活を検証した」と述べている。
フロリダ州タンパにあるDV被害者保護施設「スプリング」は年間1650人もの成人と子どもを受け入れている。経済的抑圧、精神的・肉体的虐待、性的虐待…。加害者は被害者を傷つけ、支配しようとする。なぜ家族がお互いを傷つけあうのか、被害者は傷つけられることを許してしまうのか。映画に映し出される現実は、この問題について我々が抱いているステレオタイプを覆していく。
前作が被害者救援施設を舞台としたのに対し、本作ではDVが裁かれる法廷に舞台を移す。当事者同士の接触を避けるため、加害者はモニターに映し出されるだけの法廷。何組もの被害者と加害者が登場し、次々に様々なDVの審理が進められる。延々と映し出されるいくつもの裁判。法廷審理から彼らの人生とドラマが浮かび上がる。
ワイズマンが、コメディ・フランセーズの女優カトリーヌ・サミィのために脚色したワシーリー・グロスマンの小説「人生と運命」の一章を映画化した作品。1941年のウクライナ、ゲットーのユダヤ人はナチによって全員殺されることになった。年老いた女医アンナ・セミョーノワは、息子に宛てた手紙を口述筆記する。自分の人生を振り返り、死と立ち向かう女性の恐怖、勇気、弱さ、そして威厳が浮かび上がる。
アイダホ州州議会の日常を追う。壮麗な州議会の建物の中では、校内暴力、狂牛病、間接喫煙の規制緩和、電話料金等々、多様な問題を扱う多数の委員会が開かれている。委員会には議員だけでなく、ロビイスト、それぞれの問題の専門家や関係者、一般の市民も参加する。果てしなく続けられる議論の合間に、州議会を見学に訪れる子どもたち、ロビーで行われるコンサートの模様などが挿入される。
世界でもっとも早く生まれたバレエ団を抱えるパリ・オペラ座。カメラは奈落から屋上まであらゆる場に入りこみ、ダンサーたちはもちろん、バレエ団トップのルフェーヴル女史、振付家、ベテランダンサーの教授陣から演奏家、衣装係、舞台美術、照明係などの裏方たちまで様々な活動を映し出す。
テキサス州オースティンにある元プロボクサー、リチャード・ロードが開いたボクシング・ジム「ローズ・ジム」。ここには様々な人々がやってくる。大人も子どもも男も女も、プロを目指す者もスポーツ好きなアマチュアも、医者、弁護士、裁判官、ビジネスマン、移民、プロボクサーも。ローズ・ジムは、人々が出会い、話し、鍛える、人間のるつぼ…。アメリカそのものだ。
「ムーラン・ルージュ」、「リド」と並ぶパリの三大ナイトショーのひとつ「クレージーホース」。2010年、フィリップ・ドゥフクレの振付による新作ショーの準備が進められている。リハーサル、メイクアップ、衣装の制作、オーディション、運営会議等を記録。ダンサーの完璧なボディと緻密に計算された音と光の演出でパリを魅了してきたクレージーホースの全貌を描き出す。
ワイズマンが“大学”を撮った作品。カリフォルニア大学バークレー校は、1868年に創設された州立カリフォルニア大学の発祥地であり、アメリカで最も古く権威のある総合大学である。世界有数の研究教育機関であり、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。研究教育機関として知的・社会的使命を果たすための授業や研究活動、大学構内で行われる学生たちの様々な活動、スポーツイベントやコンサート。また、大学を維持・管理・経営するための無数の会議や行政との折衝など、大学で行われるあらゆる活動を追っている。
ダ・ヴィンチ、モネ、ゴッホ、ミケランジェロなど名作を擁し、“世界最高峰”と賞される英国「ナショナル・ギャラリー」。ギャラリートークやワークショップ、館内ツアーや、丹念な修復作業、閉館後に行われる展示や照明のチェック、運営会議等々、美術館で行われる様々な活動を記録する。
ニューヨーク市クィーンズ区の北西に位置する、ニューヨークで最も多様性に富む町“ジャクソンハイツ”。南アメリカ、メキシコ、バングラデシュ、パキスタン、アフガニスタン、インド、中国等々の移民たちが住み、167の言語が話される。ワイズマンは、この町に生きる人々、商店主たち、LGBTの人々、ボランティア、老人たち、子どもたち、不法滞在者等々の多様な姿を、生き生きと彩り豊かに捉えている。
世界有数の図書館である「ニューヨーク公共図書館」の舞台裏に迫る。膨大な書籍や資料を保有し、すべての市民に提供するこの図書館は、個人の知る権利、情報を受け取る権利を守るアメリカの民主主義の理念を体現する場でもある。「政治情勢がどうであれ、この図書館は今なお、社会的包摂、民主主義、表現の自由のひとつの理想形であり続けている。」
2016年のアメリカ大統領選の結果を受けて、ワイズマンはアメリカ中西部インディアナ州の農業の町モンロヴィアを題材に選んだ。牧歌的な農場の風景にはじまり、フリーメーソンのロッジ、ライオンズクラブ、高校、教会、銃砲店などを細やかに観察しながら、昔ながらの価値観、生活様式を護り続ける“善きアメリカ人”の姿を浮かび上がらせる。(山形国際ドキュメンタリー映画祭ウェブサイト参照)
多様な人種と文化が共存する大都市ボストン。その市庁舎は、警察、消防、保健衛生、高齢者支援、ホームレスの支援、同性婚の承認など数百種類ものサービスを提供し、人種的平等、気候変動対策、住宅価格問題といった様々な課題に取り組んでいる。ウォルシュ市長を筆頭に、市当局が様々なアプローチで市民と対話し、市民のための市役所であろうと奮闘する姿を映す。
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フランス中部の村ウーシュにあるレストラン「トロワグロ」。55年間、ミシュランの三つ星を獲得し続けるこのレストランは、1930年にトロワグロ・ファミリーによって創業された。以来、94年、続けられてきたあくことなき食への追及、食材の仕入れから、調理、サービスに至るまで、“至福のレストラン”を生み出す日々を記録している。