フレデリック・ワイズマンの足跡 1967-2023 第1期-第2期 上映作品解説

チチカット・フォーリーズ


チチカット・フォーリーズ
Titicut Follies

1967年/84分/白黒/Blu-ray
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・マーシャル

マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかがさまざまな側面から記録されている。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品。永年にわたる裁判の末、91年にようやく上映が許可された。

高校


高校
High School

1968年/75分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:リチャード・ライターマン

フィラデルフィア郊外にある“模範的な”高校の日常を追っている。朝のホームルーム、授業の風景、生活指導、父母を交えた進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動……。高校を構成する教師、生徒、親、管理職たちの関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられていく。

法と秩序


法と秩序
Law and Order

1969年/81分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

ミズーリ州カンザス・シティの、最も犯罪率の高いアドミラル・プールヴァール管轄区にある警察の様々な活動を追っている。売春の摘発、未成年犯罪者や拳銃を所持する窃盗犯の逮捕など緊迫した状況を追う一方で、老女のバッグ探しや迷子の保護、養育権をめぐる夫婦のいさかいの仲裁など、市民生活のあらゆる側面に関わる警察の活動をとらえている。

病院


病院
Hospital

1970年/84分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

ニューヨーク市、ハーレムにある大きな都市病院、メトロポリタン病院の活動を緊急棟と外来患者診療所に焦点を当てて記録した作品。病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員とのやりとりを通して都市が抱える多くの問題を浮かび上がらせる。

基礎訓練


基礎訓練
Basic Training

1971年/89分/白黒/Blue-ray
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

ケンタッキー州フォートノックスの基地で行われる新兵を育成するための基礎訓練の様子を描く。行進や格闘、射撃や銃の使い方を学ぶ教練、生活指導、イデオロギー教育やカウンセリング等々を通して、まだ子どもっぽさの抜けない若者が兵士に仕立て上げられていく。ベトナム戦争の最中に撮影された。

エッセネ派


エッセネ派
Essene

1972年/89分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

ベネディクト会エッセネ派の僧院の日常を追う。個人の欲求と組織としての論理の対立、規則、労働、信仰、価値、愛、そして祈り。日々の生活の中で修道士たちが直面する問題は特別なものではなく、“組織”というものが抱え込まざるをえない共通の問題であることが見えてくる。

少年裁判所


少年裁判所
Juvenile Court

1973年/144分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

テネシー州メンフィスにある少年裁判所を撮った作品。罪を犯した少年を裁く訴追側や裁判官だけでなく、少年側に立つ弁護士やソーシャル・ワーカーにとってでさえ、各事件はあくまで膨大な日常業務の流れの中にあるという事実が冷静に積み重ねられてゆく。次々に捌かれてゆく事件の合間で、裁かれる少年の切実な表情が目を射る。

霊長類


霊長類
Primate

1974年/105分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

霊長類に関する研究の先駆的な施設として知られるヤーキーズ霊長類研究所で撮影。猿を使った様々な動物実験が、その研究の目的や意義はほとんど説明されないままに、次々と映し出される。虐待と見誤りかねない数々の実験の映像は、故意に研究所を貶めたとする人々と、生体実験に反対する人々との間に激しい議論を巻き起こした。

福祉


福祉
Welfare

1975年/167分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

ニューヨーク市のウェイヴァリー福祉センターを舞台に福祉行政のありようを描いた作品。住宅問題、失業問題、医療問題、幼児虐待などの児童問題、老人問題など、多様な問題と係わる福祉システムの性質を検証し、福祉活動家の置かれている状況、受益者の問題、福祉の本質などを浮かび上がらせる。

肉



Meat

1976年/113分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

野の草を食む「牛」はいかにして「肉」となるか。牛がトラックで牧場の外へと連れ出され、巨大精肉工場で製品化され、市場に送り出されていくまでの全工程を記録する。「牛」が徹頭徹尾「肉」として扱われるこの場所で、細分化された各工程が一分の狂いもなく進行する過程を、的確な映像と編集のリズムによって映し出していく。

パナマ運河地帯


パナマ運河地帯
Canal Zone

1977年/176分/白黒/Blu-ray
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

永年、事実上アメリカの植民地だったパナマ運河地帯。1977年にカーター大統領は新運河条約を締結し、運河を米パ両国で共同管理することを決めた。政府関係者、軍人、ビジネスマンなどなど、この地帯で暮らす様々な“アメリカ人”の生活が描かれる。同地帯は1999年12月31日にパナマに完全返還された。

シナイ半島監視団


シナイ半島監視団
Sinai Field Mission

1978年/127分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ウィリアム・ブレイン

1973年10月第四次中東戦争が終結し、第二次シナイ協定に基づき、エジプトとイスラエルの間のシナイ緩衝地帯に米国シナイ半島監視団が置かれた。灼熱の砂漠の中の小隊。“アメリカの外のアメリカ”として“アメリカらしさ”が奇妙に凝縮されたこの場所を、ワイズマンは広大な砂漠のごく小さな一点として映像に収めている。

軍事演習


軍事演習
Manoeuvre

1979年/115分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィー

東西対立時代に毎年行われていたNATOの秋季大演習に密着取材し、その全貌を記録した作品。この作品の撮影が行われた1978年の演習は北極海から地中海までの加盟国全域に渡る大規模なものだったが、特に演習が集中したのは旧東ドイツとの国境近くであり、第三次世界大戦を想定したデモンストレーションと見なされ、国際的に大きな波紋を呼んだ。この作品からジョン・デイヴィーが撮影を担当している。

モデル


モデル
Model

1980年/129分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィー

ニューヨーク市でも最高のモデル事務所であるゾリ・マネージメント社を舞台に、化粧品やデザイナーズ・ブランドのCM、ファッション・ショー、広告などの仕事をする男女のモデルたちを追っている。彼らを取り巻くエージェント、カメラマン、撮影スタッフやデザイナーなどの姿を通してファッション・ビジネス界のありさまが描かれている。

ストア


ストア
The Store

1983年/118分/カラー/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィー

1907年の開店以来、高級百貨店として揺るぎない地位を築いてきたニーマン=マーカス百貨店テキサス州ダラス本店。1982年のクリスマス・シーズンにおけるニーマン=マーカスを舞台に、訪れる客や接客する従業員、華やかな売場の舞台裏で働く人々の姿が映し出される。ワイズマン初のカラー作品。

競馬場


競馬場
Racetrack

1985年/114分/白黒/16mm
監督:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィー

世界屈指のサラブレットの競馬場、ニューヨークのベルモント競馬場についてのドキュメンタリー。厩舎での馬の出産から始まり、調教師や飼育係、馬主、獣医たちの活動、レースをとりまく人々、観客たち、騎手たち、この競馬場の経営を支えるオーナーたちの巨大なパーティとその舞台裏まで、競馬というビジネスのあらゆる側面が映し出される。