ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第9回 キラ・ムラートワ
2014年6月28日(土)・6月29日(日)
会場:神戸映画資料館
今回は、昨年のロッテルダム映画祭で特集が組まれるなど、世界的に再評価の機運が高まるキラ・ムラートワ監督に注目。ウクライナを拠点に、現在も活動を続ける彼女の初期2作品を上映します。
今回は、昨年のロッテルダム映画祭で特集が組まれるなど、世界的に再評価の機運が高まるキラ・ムラートワ監督に注目。ウクライナを拠点に、現在も活動を続ける彼女の初期2作品を上映します。
■上映スケジュール
6月28日(土)
13:30 | 長い見送り(95分) |
15:20 | 灰色の石の中で(83分) |
17:10 | 長い見送り(95分) |
6月29日(日)
13:30 | 灰色の石の中で(83分) |
15:15 | 長い見送り(95分) |
17:10 | 灰色の石の中で(83分) |
■作品解説(井上正昭)
長い見送り
Долгие проводы
1971年(95分)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督:キラ・ムラートワ
脚本:ナタリア・リャザンツェワ 撮影:ゲンナジー・カリューク 音楽:オレーグ・カラワイチューク
出演:オレグ・ウラジーミルスキー、ジナイーダ・シャルコ
離婚した母親と、思春期の多感な息子のあいだの葛藤を、瑞々しくも大胆なタッチで描いたムラートワの監督第2作。「ロング・グッドバイ」を意味する原題を持つこの作品と、これとは真逆のタイトルを持つ単独監督デビュー作『短い出会い』の初期2作はアイロニカルにも「地方メロドラマ」と称される。キャメラの繊細な動き、突飛なモンタージュ、音とイメージのずれなど、その斬新な映像センスがすでに比類ない才能を感じさせる驚くべき傑作。党の要請に部分的に従わなかったために、この作品は16年間お蔵入りとなり、ムラートワは以後長きにわたって映画を撮れなくなる。次第に壊れてゆく母親を演じるジナイーダ・シャルコの、ジーナ・ローランズを彷彿とさせる神経症的な演技がすばらしい。
灰色の石の中で
Среди серых камней
1983年(83分)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督・脚本:キラ・ムラートワ
原作:ウラディミール・コロレンコ 撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:イーゴリ・シャラーポフ、スタニスラフ・ゴヴォルーヒン
舞台はおそらく19世紀のロシア。母を亡くしたばかりの少年ワーシャは、妻の想い出に浸って自分を見てくれない父親を避けるようにひとり街を遊び歩くうちに、同い年ぐらいの兄妹と知り合い、奇妙な浮浪者たちが隠れすむ教会の地下に入り浸るようになる。子供向けの物語を借りた大人のための寓話。『長い見送り』の直後からすでにシナリオが書き始められていたが、度重なる検閲によって細部の改変を強いられ、ムラートワはついには完成作から自分の名前を外してしまう。絶えず動き回り、いっせいに話し始める人物たち。理解しがたい行動と、反復される支離滅裂な言葉。混沌としたイメージは、これ以後の作品に共通するものであり、むしろ『長い見送り』以上にムラートワ作品の特徴が現れていると言ってもいい。