ケベック映画特別上映会
『ユー・ウィル・リメンバー・ミー(Tu te souviendra de moi)』
エリック・テシエ監督 来日記念イベント
2023年10月3日(火)
会場:アテネ・フランセ文化センター
2023年でケベック州政府在日事務所は開設50周年を迎えます。この節目の年に、モントリオールの姉妹都市である広島市の映像文化ライブラリーで、「ケベック映画特集」(9月21日から30日まで)が開催されます。
これに際して、上映作品のひとつ『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』のエリック・テシエ監督が来日。東京でも同作品の上映とテシエ監督のアフター・トークを行います。
私の最もパーソナルなこの映画が広島と東京で上映されることは、とても光栄なことです。
エリック・テシエ(映画監督、テレビ・ディレクター)
私がこれまで製作した作品の中で最もパーソナルなこの映画『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』が、異なった文化や環境においても、共感を得られる可能性があると知ることは、私にとって大きな意味を持ちます。できることなら、私の映画を直接紹介する機会があれば嬉しいと考えておりました。また、鑑賞いただくお客様と、より個人的で親密な出会いの機会になればと思っております。
ぼくたちはまだ、ケベック映画を知らない──。
杉原賢彦(映画批評、目白大学准教授)
2009年のカンヌ映画祭は、19歳の青年が撮った映画で持ちきりだった。グザヴィエ・ドラン『マイ・マザー』。日本では、その翌年に撮られた『胸騒ぎの恋人』が先に紹介されたと記憶しているが、ドランの登場は神話じみて、唐突で、そして衝撃だった。だが、その後景で見落とされていたこともあった。──彼の出自だ。
カナダ・モントリオールの生まれ。フランスではない国から生まれたフランス語の映画は、フランスでは字幕がなければ会話の理解すらおぼつかない。ドランはフランスのフランス語とは異なるフランス語文化圏=ケベックに誕生した映画作家だったのだ。
衝撃からすでに10年以上が経ったいま、ぼくたちはケベックの映画=ケベック映画が、けっしてドランだけではないことを知りつつある。そう、ドランの前には親日家フランソワ・ジラールがいたし、ハリウッドでの活躍も目覚ましいドゥニ・ヴィルヌーヴが、そして昨年、急逝したジャン=マルク・ヴァレもいたのだ。あるいは新たな才能に目を向けるなら、2018年の東京国際映画祭で上映された『さよなら、退屈なレオニー』のセバスチャン・ピロトが、そして本作『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』のエリック・テシエが、まだ知られぬ才能として控えている。
彼ら新たなケベック映画の担い手を、ぼくたちはまだ知らないでいる。だが、彼らこそ(ドランに代わって)新たなケベック映画を開こうとしているのだ。たとえばピロトが一昨年に撮った“Maria Chapdelaine”は、旧く『白き処女地』として知られていた往年のフランス映画を、ケベックの視点から語り直したものだった。そのヒロインのサラ・モンプチは、いま上映中のケベック=フランス映画『FALCON LAKE』のヒロインでもある。あるいは、『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』で小生意気な少女ベレニスを演じているのは、ピロトの『さよなら、退屈なレオニー』のヒロイン、カレル・トランブレ(彼女のいまどきな表情は、ほんとうに魅力的だ)。
ぼくたちがまだ知らなかったケベック映画を、ここから探してみよう。ドランだけに留まらないその魅力を──。
■上映スケジュール
※チケットは17:40から当日上映分を販売します。
10月3日(火)
18:00 |
『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』(108分) トーク:エリック・テシエ(映画監督、テレビ・ディレクター)、 杉原賢彦(映画批評、目白大学准教授) |
■上映作品
©Marlene Gelineau Payette,
Les Films Opale.
ユー・ウィル・リメンバー・ミー
Tu te souviendra de moi
2020年/108分/カナダ/Blu-ray/日本語字幕
製作:クリスチャン・ラルーシュ
監督・脚本:エリック・テシエ
原作:フランソワ・アルシャンボー
撮影:ピエール・ジル
音楽:マルタン・レオン
編集:ジャン=フランソワ・ベルジュロン
出演:レミ・ジラール(エドゥアール) カレル・トランブレ(ベレニス) ジュリー・ル=ブルトン(エドゥアールの娘イザベル) フランス・キャステル(エドゥアールの妻マドレーヌ)
引退した歴史学の大学教授エドゥアールは初期の認知症を患っていた。言いたいことがあっても口にできず暴力的になる夫に、妻のマドレーヌは半ば愛想づかし状態。そんな毎日を過ごす彼に、義理の息子は孫のベレニスを世話役としてあてがう。小生意気な彼女と触れあううち、ふたりとまわりの人々に変化が訪れる……。
フランソワ・アルシャンボーによる同名戯曲を、ケベックの俊英エリック・テシエが映画化。エドゥアール役に『やすらぎの森』の名優レミ・ジラール、ベレニス役に『さよなら、退屈なレオニー』のカレル・トランブレ、それぞれが好演を見せている。
2022年のカナダ・スクリーン・アワード脚本賞、撮影賞にノミネート。
■監督紹介
エリック・テシエ
Éric TESSIER
1966年3月19日、カナダ・ケベック州のサン=カジミールに生まれる。13歳のときにスーパー8で短編を撮影したのが、映画監督を志すきっかけだったという。やがてモントリオールのコンコルディア大学に進み、そこで本格的に映画を学ぶ。卒業後はテレビの世界でコマーシャル・フィルムやドキュメンタリー作品に携わるかたわら、短編作品“Neige au soleil”(1995)、“Viens dehors !”(1998)が国内の映画祭で注目される。
2003年、最初の長編作品“Sur le seuil”を撮る。ファンタ系スリラー映画だったが、いきなり注目の存在に。続く“5150 rue des Ormes”(2009)も同系列の作品として異例のヒットを記録。さらに2012年にはガラッと変わってカナダ最初の3D作品で少年スポーツ映画“Les Pee-Wee 3D”を撮り、トロント国際映画祭でも評判になり、その続編も製作。
本作『ユー・ウィル・リメンバー・ミー』は、監督にとって第5作となり、初めて原作戯曲をもとにした作品でもある(原作はフランソワ・アルシャンボーによるタイトル同名の舞台劇)。