©1967 松竹株式会社
人工授精をテーマに、斬新かつ洗練された画面構成で描かれた心理サスペンス。人工授精で生まれた男の子を育てる夫婦の元に、その子の生物学上の父親だと思われる男が現れる。
解説:
人工授精をテーマとして取り上げた吉田喜重は、その2年前の『水で書かれた物語』から始まった「アンチ・メロドラマ」の作品を作り続けている。パートナーである岡田茉莉子を撮ることで女性の
©1977 松竹株式会社
江戸川乱歩の小説『陰獣』の映画化。本格推理小説家による殺人事件の謎解きを描く。
解説:
4年ぶりに加藤泰が撮った1977年の(加藤の)後期作品の一つが、実際のところ80年代初期の作品の一つだったとしたら?スリラーとして構想された『江戸川乱歩の陰獣』は、蓮實重彦が当時述べたように「単眼の世界」を展開し、通常行われるはずの警察捜査は排除され、普段なら暗闇の奥深くにあるものに光が当てられ表面化している。
©1978 松竹株式会社
小林久三の同名小説を映画化。東京に向かうブルートレインの中で進む一部の自衛隊員によるクーデター計画と事態の収拾に乗り出す政府の駆け引きを描く。
解説:
『皇帝のいない八月』で自衛隊は危険な軍事組織として描かれ、その協力を得ることなく製作された。現代社会において、このような映画を作るにあたっての検閲や法的な問題は存在しない。しかし、今日の多中心的主義的な情勢の中でもなお、このような作品の製作は可能なのだろうか?
©日活
人生に絶望し、ホテトル嬢と無理心中を図ろうとした男。2年後、ふたりはタクシーの運転手と客として偶然に再会する。後期ロマンポルノを代表する作品。
解説:
相米慎二が一週間もかけずに撮影した『ラブホテル』は、日活によるロマンポルノの中でも最高傑作の一つとされており、ポストスタジオ時代の日本映画におけるプロデューサー成田尚哉の重要性を間接的に示している。
©『愛について、東京』
製作委員会
東京を舞台に、中国人留学生と日本育ちの中国人少女、パチンコ店を経営する元ヤクザの奇妙な三角関係を描く。
解説:
貧困と詐欺、出自による差別。柳町光男は自身の第6作目で、大島から今村、土本から小川まで、1960年代に最も批判的で鋭い映画を生み出したテーマを再び取り上げた。しかし、柳町が彼らの最も優れた後継者の一人であるのは間違いないとして、彼は何よりもジョルジョ・アガンベンが定義する「自分が生きる時代が孕む闇を顔いっぱいに受け止める」あの「同時代人」なのである。
©現代映画社
24年前に失踪した娘の突然の帰還。彼女は記憶喪失者だった。三代の母子は導かれるように広島に向かう。ミステリアスな設定に突如浮上する原爆の記憶を暗喩に満ちた話法で描いた女性映画。
解説:
吉田喜重監督の最新作は、映画というメディアの条件と限界、あるいは捉えがたいものや表現できないものに付きまとわれた映画の一世紀の集大成の感動的な演出を提案している。
Ⓒ2004『カナリア』
パートナーズ
テロ事件を起こしたカルト教団から保護された光一は、幼い妹を取り戻すために施設を抜け出し東京を目指す。
解説:
『カナリア』はロード・ムーヴィーだ。しかし、1960年代以降の多くのロード・ムーヴィーが、我々の自由に課せられた限界を認識すること(大島渚)や、原初なる日本を目指すこと(今村昌平)であったのに対し、この主人公の旅は現代の廃墟への彷徨であり、どんな過去や伝統とも再び結びつくことがない表層を辿る純粋な痕跡のようなものである。
©エイベックス通信放送
町田康による異色時代小説の映画化。とある藩に仕官するために浪人がかましたハッタリが引き起こす大騒動の顛末とは…?
解説:
2004年当時「映画化不可能」とされていた小説を(石井聰亙の名でサイバーパンク映画の急先鋒として知られる)石井岳龍が映画化した『パンク侍、斬られて候』は、東映の協力のもと日本国内300館で公開された後に、dTVの独占コンテンツとして配信されるなど、ハイブリッドな形での配給が行われた。
©空族
3・11後の現代日本における仏教の意義、また信仰とは何かを曹洞宗の若き僧侶の姿を映したドキュメンタリーとフィクションを交えて探求する。
解説:
『サウダーヂ』や『バンコクナイツ』を含む尺の長い作品の後では『典座-TENZO』は富田克也のフィルモグラフィーをほぼ逸脱したような地味な存在に思えるかもしれない。しかし、本作は処女作『雲の上』の登場人物を再発見することで、その一貫性を明確にしているだけでなく、ハイブリッドで実験的な形式を通して、この映画監督が獲得した大きな自由を証明している。