ベトナム映画の新星
ファム・ティエン・アン監督特集
A New Star in Vietnamese Cinema
A Special Screening of Films by PHAM Thien An
2024年6月29日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター
近年活況を呈しているベトナム映画の新星ファム・ティエン・アンは、これまでに2本の短編映画と1本の長編映画を監督している。長編第一作『黄色い繭の殻の中』は、昨年のカンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞。独学で到達したと言われるその個性的な映画言語はアンドレ・バザン賞を受賞するなど世界的な注目を集めている。
今回の特集ではファム・ティエン・アン監督の全作品3本を上映するとともに、トークを実施し、同監督の現在と未来の可能性について考えることとする。
■上映スケジュール
※チケットは1回目上映開始の30分前から、当日上映分を販売します。
6月29日(土)
14:00 | 『黄色い繭の殻の中』(178分) |
17:30 | 『静黙』『常に備えよ』(計29分) トーク: 四方田犬彦(映画研究者・比較文化研究者) 石坂健治(日本映像学会アジア映画研究会代表) |
■上映作品
©JK Film
静黙
The Mute
2018年/15分/DCP
監督・脚本・編集:ファム・ティエン・アン
プロデューサー:ファム・ティエン・アン チャン・ヴァン・ティ
撮影:ディン・ズイ・フン
出演:ファム・レー・キム・ゴック ダン・レー グエン・タン グエン・ラン・クイン・ハン ヴー・チョン・トゥエン レ・ゴック・トアン
止む気配のない強い雨の夜、親が決めた結婚を明日に控えたヒロインは同性の恋人に会いに家を抜け出す。ヒロインは口がきけない。しかし彼女が押し黙る理由はそれだけなのか。じわじわと締め付けてくる社会通念と神の豊かな愛との間に矛盾はないのかと監督は問いかける。
©JK Film
常に備えよ
Stay Awake, Be Ready
2019年/14分/DCP
監督・脚本・編集:ファム・ティエン・アン
プロデューサー ファム・ティエン・アン チャン・ヴァン・ティ
撮影 ディン・ズイ・フン
出演: レー・クオック・バオ・ヴィ チュン・ドン・カオ ヴー・チョン・トゥエン
蒸し暑い一日の終わり、賑やかな街角の屋台で三人の男たちが謎の会話を繰り広げていると、すぐ近くで突然バイク事故が起きた。流しの歌手、大道芸人の少年、ビールを販促する若い女性、野次馬など多様な人々を、カメラは全編ワンショットで捉える。長編デビュー作『黄色い繭の殻の中』(2023)に繋がる短編。
©CERCAMON
黄色い繭の殻の中
Inside the Yellow Cocoon Shell
2023年/178分/DCP
監督・脚本・編集:ファム・ティエン・アン
プロデューサー チャン・ヴァン・ティ ジェレミー・チュア
出演:レー・フォン・ヴー(ティエン) グエン・ティン(ダオ) ヴー・ゴック・マイン(チュン) グエン・ティ・チュック・クイン(修道女タオ) グエン・ヴァン・ルー(ルー老人) フィー・ディエウ(老女)
交通事故で突然亡くなった兄嫁の遺体を、失踪した兄に代わって故郷に送り届けることになったティエン。事故で奇跡的に助かった幼い甥を連れての帰郷である。かつての恋人と再会し、兄を探す中で、監督の故郷でもあるベトナム中部高原の自然と人々の暮らしが時間をかけて美しく流れ、記憶や幻影と交差してゆく。カンヌ国際映画祭新人監督賞、アンドレ・バザン賞受賞作。
■監督情報
©CERCAMON
ファム・ティエン・アン
PHAM Thien An
1989年ベトナム中部高原のラムドン省バオロク生まれ。ホーチミン市の大学で ITを学ぶ。映画制作を本格的に学んだことはなく、撮影と編集の技術を独学で習得し、2014年の「48 Hour Film Project」で第2位となる。結婚式のビデオクリップ制作で生計を立てていた。2015年にアメリカに移るが、あくまでも“ベトナム映画”にこだわることを明言している。
2018年、2019年と続けて2本の短編『静黙』、『常に備えよ』を友人らとで立ち上げたJ Kフィルムで制作。後者はカンヌ映画祭監督週間に出品され、イリー短編映画賞を受賞した。さらにコロナ禍を経て2023年に制作した初の長編『黄色い繭の殻の中』で同年のカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞し、国際的な注目を集めた。
監督、脚本、編集のほか、プロダクションデザインやプロデューサーにも名を連ねる。宗教観に基づく強い信念、本質を見抜く洞察力、映画に対する敬意と探究心にスタッフ・キャストのみならず自然までもが応え、低予算ながら奇跡のような作品が生み出されている。