現代ブラジル文学の代表作
『乾いた人びと』(映画『乾いた人生』原作)邦訳出版記念上映会
『乾いた人生』(ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品)
特別上映とシンポジウム
2022年5月19日(木)
会場:アテネ・フランセ文化センター
ブラジル映画の新しい潮流「シネマ・ノーヴォ」の代表作ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督作品『乾いた人生』(1963)は、20世紀ブラジル文学の作家グラシリアノ・ハーモス(ラモスとも表記/1892―1953)が1938年に書いた小説を原作としている。
本年、原作が『乾いた人びと』の邦題で水声社より翻訳出版された(高橋都彦訳)。
本企画は、『乾いた人生』の上映とシンポジウムにより、ブラジル映画史に残る傑作をブラジル文学史の視点から考察する試みである。
■上映スケジュール
※チケットは1回目上映開始の20分前から、当日上映分を販売します。
5月19日(木)
16:00 | 『乾いた人生』(105分) |
18:00 |
シンポジウム「20世紀のブラジル文学と映画―グラシリアノ・ハーモスとネルソン・ペレイラ・ドス・サントスに焦点を当てて」 鈴木茂(歴史学者/ブラジル近現代史研究者) 岸和田仁(ジャーナリスト/「ブラジル文化賛歌 熱帯の多人種主義社会」著者) タミス・シルベイラ(言語学・ポルトガル語教育論研究者) |
19:30 | 『乾いた人生』(105分) |
■作品紹介
乾いた人生
Vidas Secas
1963年/105分/35mm
監督・脚本/ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
原作/グラシリアノ・ラモス(ハーモス)
撮影/ジョゼ・ローザ ルイス・カルロス・バレット
製作/エルベルト・リッシャー ダニーロ・トレリェス ルイス・カルロス・バレット
出演/アッチラ・イオリオ マリア・リベイロ オルランド・マセード
干ばつのために難民生活を強いられたファビアーノ一家。ようやく見つけた農場での生活も、権力者の搾取と横暴からは逃れられない。そして、新たな干ばつが一家をふたたび「地獄」へと突き落とした。ブラジル東北部(ノルデスチ)の内陸に生きる零細農民の苛酷な現実を、地を這うような目線で描き、シネマ・ノーヴォの評価を内外に決定づけた傑作。
■監督紹介
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス
Nelson Pereira dos Santos
1928年、サンパウロに生まれる。サンパウロ大学法学部に学び、ジャーナリスト、映画評論家、助監督を経て、リオのスラムを舞台にした『リオ40度』(1956)で長篇監督デビューを飾る。この映画は後に、新しいブラジル映画(シネマ・ノーヴォ)の先駆的作品とみなされるようになった。63年、長年の念願だったグラシリアノ・ラモス(ハーモスとも表記)原作『乾いた人生(邦訳「乾いた人びと」)』の映画化を実現。グラウベル・ローシャの『黒い神と白い悪魔』とともに、シネマ・ノーヴォを代表する作品として国際的な評価を得る。軍事政権下、政治的寓話に満ちた作品を通して表現に磨きをかけ、民政移管が始まった74年以降は大衆映画を模索する一方、ブラジルにおける民主主義のあり方を歴史的に問い直すなか、『オグンのお守り』(1975)『奇蹟の家』(1977)『監獄の記憶』(1984)などを発表。自主的な映画上映網を組織するとともに、長年大学で後進の指導にあたるなど、つねに時代情況にコミットしながら製作と運動を続けてきた気骨の映画作家である。2018年4月21日死去。最後の作品は、ブラジル音楽を代表するミュージシャン、アントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)の関係者へのインタビューで構成した『トム・ジョビンの光』(2013)。ブラジルのナショナリティーを問い直す次回作の構想もあったと伝えられる。
■原作者紹介
グラシリアノ・ハーモス(ラモス)
Graciliano Ramos
1892年、ブラジル北東部地方アラゴアス州の内陸の町に生まれ、1953年リオ・デ・ジャネイロで没したブラジル・モデルニズモ第二期の代表的な小説家のひとり。主要作品には、故郷の北東部地方を舞台にした小説『カエテー族Caetés』(1933年)、『農園サン・ベルナルドSão Bernardo』(1934年)、また、『苦悩Angústia』(1936年)などがあり、とりわけ、『乾いた人びとVidas Secas』(1938年)はブラジル文学の古典的名作とされている。また、1936年、ヴァルガス独裁政権時代に逮捕・拘禁された時の経験を語った『獄中記Memóriast do Cárcere』(1953年)は優れたヒューマン・ドキュメントとなっている。作品の大部分はヨーロッパの主要言語に翻訳されており、『乾いた人びと』『獄中記』は、シネマ・ノーヴォを代表する映画作家ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスによって映画化された(映画化邦題『乾いた人生』『監獄の記憶』)。