軍によるクーデターから20余年が過ぎ、パトリシオ・グスマンは祖国チリへと帰国する。そこで、故アジェンデ大統領の側近で事件の生存者たちから、当時の状況や証言を聞く。軍事政権下では上映が禁止されていた、グスマンの代表作『チリの闘い』を鑑賞し、9月11日を回顧し、仲間や同僚を思い、アジェンデを懐かしむ。さらに、当時の情勢についてほとんど知らない学生たちを集めて『チリの闘い』を上映し、彼らの率直な感想を聞き出す。『チリの闘い』の後日譚とも言える作品。トロント国際映画祭など多くの映画祭で上映された。
1973年の政権交代後に軍事評議会の議長となり、翌年から1990年までチリの大統領だったアウグスト・ピノチェト。1998年に病気療養のため渡ったイギリスで、スペインの司法当局からの要請によりロンドン警視庁に逮捕される。イギリスの裁判所が他国での容疑を断罪する権利についての論争が巻き起こる中、ピノチェトは一年以上も自宅監禁されることになる。ピノチェトのロンドンでの裁判を中心に追ったドキュメンタリー。カンヌ国際映画祭国際批評家週間でプレミア上映の他、多くの映画祭で上映。
人民連合の党首で、1970年から1973年のクーデターまで大統領を勤めたサルバドール・アジェンデについてのドキュメンタリー。バルパライソ生まれの医師でもあり、チリ社会党結成に参加し、政治家としてのキャリアを築いた彼の人生を、貴重な映像や家族写真とともに、アジェンデの友人や同僚、家族や労働者などへのインタビューから探る。政治家としてだけでなく、あまり知られていない一人の男性としてのアジェンデを見つめる。トロント国際映画祭やカンヌ国際映画祭など世界中の映画祭で上映された。
チリ・アタカマ砂漠。標高が高く空気も乾燥しているため天文観測拠点として世界中から天文学者たちが集まる一方、ピノチェト独裁政権下で政治犯として捕えられた人々の遺体が埋まっている場所でもある。生命の起源を求めて銀河を探索する天文学者たちと、行方不明になった肉親の遺骨を捜して砂漠を掘り返す遺族たちの時間が交差する。ヨーロッパ映画賞の最優秀ドキュメンタリー賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀賞を受賞するなど、世界中で話題となった。
© Atacama Productions (Francia)
Blinker Filmproducktion y WDR (Alemania)
Cronomedia (Chile) 2010
全長4300キロに及ぶ長い国土を持ち太平洋に臨んでいるチリ共和国。その西パタゴニアの海底でボタンが発見された。そのボタンはピノチェト政権により政治犯として殺された人々や、祖国と自由を奪われたパタゴニアの先住民の声を我々に伝える。火山や山脈、氷河など、チリの超自然的ともいえる絶景の中で流されてきた多くの血、その歴史を、海の底のボタンがつまびらかにしていく。ベルリン国際映画祭で銀熊賞脚本賞を受賞。
© Atacama Productions, Valdivia Film, Mediapro, France 3 Cinema - 2015