イタリア人女性とその女友達が過ごす昼下がり。娘ナタリーは暴力的な行動が基で退校させられようとし、ラジオからは逃走中の未成年殺人者のニュースが。そこにセールスマンが不意に現れる。家の内と外に潜在する暴力。パリ西方の村に購入した古い農家から発想され、そこで撮られた。空間が重要な役割を演じ始める作品。
もの寂しい郊外を走るトラックやその車窓からの風景と、室内でシナリオを読むデュラスと、時に間の手を入れる聞き手ドパルデューとが交互に映し出される。シナリオはトラックの運転手が正体の曖昧な中年女性を乗せる設定で語られるが、トラックに人の姿は映らない。デュラス=女は、階級闘争、ユダヤ人、世界の終りを語る。
製作方針の変更で『船舶ナイト号』で未使用となったパリのショットを用いて作られた短編。チュイルリー庭園やコンコルド広場の彫像をゆるやかな移動で捉える映像に、デュラスのモノローグが流れる。セザレはパレスチナの地名。その固有名に、国家の大義のため愛する人に棄てられたユダヤの女王ベレニスの悲痛が重なる。
「セザレ」と同じ事情で作られた短編。ここでは夜明けから早朝に至るパリ市街が車窓から捉えられ、そこにデュラスのモノローグが重なる。大西洋に面したスペイン、アルタミラ洞窟に残された手形を、デュラスは手で書かれた最初の、愛の、欲望の叫びと解し、彼になり代わって語る。夜のパリは洞窟の比喩となる。
午後から夕暮れに至るセーヌ河上をゆっくりと移動する船上から撮られた映像に、デュラスのモノローグが重なる。橋上の逆光の人影、時に響く現実音。18歳(デュラスにとって重要な年齢)のオーレリアが、死んだユダヤ人への愛の言葉を書き送る。彼女は収容所で死んだユダヤ人の孫あるいは子の世代で、世界中に遍在している。
前作と同じ枠組み、今回はモノクロで、ノルマンディの海辺、室内、無人の貨物駅、「オーレリア・シュタイネル」の文字や200095という数字が映る中、デュラスのモノローグは、街を破滅させる海の恐怖やオーレリアの父母の強制収容所での死を語る。もう一つのオーレリア『パリ』は、テキストは書かれたが撮られなかった。
別離のために海辺の別荘で再会する兄と妹が交わす会話、そこで想起される過去の出来事。濃密に漂う近親相姦の匂い。デュラスはムージル『特性のない男』(アガタの名はこれに由来)を読み、自身の次兄への感情に気づく。デュラス自身とヤン・アンドレアの声が響く空の空間を、亡霊のようにビュル・オジェとヤンがよぎる。