特集 アジア映画で〈世界〉を見る

2014年1月26日(日)・2月2日(日)
会場:映画美学校試写室

メコンホテル

石の賛美歌

THE DEPTHS

評論集「アジア映画で〈世界〉を見る 越境する映画、グローバルな文化」(作品社)刊行記念。重要作品の上映とトーク、講義、シンポジウムによる各プログラムから、アジア映画の境界線を多角的に探っていきます。

「アジア映画で<世界>を見る 越境する映画、グローバルな文化」(作品社刊)は、「映画」と現実の「世界」の関係性を問題にしている。ここでは、それをさらに発展させ、アジアで最も先鋭的な監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンに関して、本書の執筆者二人が異なる視点からトークを行う。また本書のキーワードの一つである「政治性」という観点から、イスラエル映画史についての講義と、パレスチナ映画に関するトークを行い、対立する国家の映画表象から何が炙り出されるのかを探る。エドワード・ヤンのシンポジウムでは「過去の映画を読み直す」こと、また演劇批評家と映画監督という異種混合のセッションによる多角的な検討が、その全体像を豊かに照らし出すだろう。それらを統べる編者三人でのトークは、本書で行った様々な試みを検証する。それぞれが、アジア映画を通して「世界」を捉え直し切り拓く試みとなるはずだ。
夏目深雪(批評家)

■上映スケジュール
1月26日(日)
13:00-上映「メコンホテル」(61分)
 +トーク「アピチャッポンの亡霊(ファントム)」:福間健二、渡邉大輔
15:30-講義「徹底・即解 イスラエル映画史」:四方田犬彦
18:30-シンポジウム「エドワード・ヤン以前/以後」:筒井武文、森山直人、舩橋淳

2月2日(日)
13:00-上映「メコン・ホテル」(61分)
14:30-上映「石の賛美歌」(105分)
 +トーク「パレスチナの映画と現在」:土井敏邦、金子遊
17:45-上映「THE DEPTHS」(121分)
 +トーク「アジア映画の境界線」:石坂健治、野崎歓、夏目深雪

■プログラム

メコンホテル

プログラム1
「アピチャッポンの亡霊(ファントム)」

上映:「メコンホテル」2012(61分)監督=アピチャッポン・ウィーラセタクン
トーク:福間健二(詩人・映画作家)、渡邉大輔(映画批評家)

『メコンホテル』は物議を醸す、多面体のような映画である。アピチャッポン映画ではお馴染みの怪異について、本書で渡邉大輔氏はアジアを跋扈しながら緩く繋ぐ「亡霊」の一変種であると論じ、福間健二氏はそこに「アジアを超えたいアジア」を見出す。気鋭の映像論者と詩人・映画作家との語らいは、アピチャッポンについての新たな視座を拓くであろう。(夏目深雪)

プログラム2
「徹底・即解 イスラエル映画史」

講義:四方田犬彦(映画研究者)
※参考上映(抜粋):「さまよえるオデッド」(1932/監督=ハイム・ハラフミ)「月に空いた穴」(1965/監督=ウリ・ゾハール)■ビデオ上映/英語字幕付き・日本語字幕無し

いまイスラエル映画を観るとはどういうことか。四方田犬彦が、イスラエルの国家成立の根底にあるシオニズムがいかにスクリーンに表象されたかを検討する。パレスチナ時代の最初の劇映画『さまよえるオデッド』と、国家成立後にシオニズムを軽妙に風刺した『月に空いた穴』を部分上映し、イスラエル映画史を概括する。(四方田犬彦)

プログラム3
「エドワード・ヤン以前/以後」

シンポジウム:筒井武文(映画作家)、森山直人(演劇批評家)、舩橋淳(映画作家)

死後も愛され続けるエドワード・ヤンの映画。本書では、「古典」「演劇」というキーワードで、演劇批評家の森山直人氏がヤンの映画に新たな光を当てている。今回は、筒井武文監督と、ヤンの映画作りに多大な影響を受けているという舩橋淳監督を迎え、初期から後期への主題や映像の変化を見ながら、ヤンが変えたのは一体何かを探る。(夏目深雪)

石の賛美歌

プログラム4
「パレスチナの映画と現在」

上映:「石の賛美歌」1990(102分)監督=ミシェル・クレイフィ
トーク:土井敏邦(ジャーナリスト・映画作家)、金子遊(映像作家・批評家)

パレスチナ映画とは抵抗の歴史である。イスラエル占領下で出会い、投獄され、再会する男女の愛の物語に、インティファーダの記録映像が交錯する『石の賛美歌』を上映。ジャーナリストであり、『沈黙を破る』等の映像作品も手がけた土井敏邦監督と、本書でパレスチナ/イスラエル映画論を執筆した金子遊が、パレスチナ映画を論じる。(金子遊)

THE DEPTHS

プログラム5
「アジア映画の境界線」

上映:「THE DEPTHS」2010(121分)監督=濱口竜介
トーク:石坂健治(映画研究者)、野崎歓(フランス文学者)、夏目深雪(批評家)

アジア映画を捉え直すということは、その境界線を探ることだ。編者の三人が、自身のアジア映画歴を振り返り、本書で行った様々な試みを検証しながら、「アジア映画がどこに行くのか」を語り合い、未来に拓くための提言をする。上映は、夏目深雪の論考で国際共同製作の例として挙げられている濱口竜介の『THE DEPTHS』。(夏目深雪)


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アジア映画で〈世界〉を見る
越境する映画、グローバルな文化
夏目深雪、石坂健治、野崎歓編

グローバリズムの中、越境し変容するアジア各国と日本の映画。「今、アジア映画を見ること」の意味を問いながら、歴史/政治/社会状況を読み解きつつ、映画/映像の可能性を探り、批評の文脈を刷新する。地図上の〈世界〉とわれわれの生きる現実(リアル)な〈世界〉を、14の論考と7つの対談・座談で切り取る、画期的評論集!

本体2,800円 ISBN 978-4-86182-461-6 作品社



■各回入れ替え制
■各日12:00から各回の整理券を配布します

■料金

一般=1500円
アテネ・フランセ文化センター会員=1400円
※プログラム3「エドワード・ヤン以前/以後」は1000円でご入場いただけます。
※書籍「アジア映画で〈世界〉を見る」を受付でご提示された方は、アテネ・フランセ文化センター会員料金でご入場いただけます。

■お問い合せ

アテネ・フランセ文化センター
03-3291-4339(13:00-20:00)

■会場

映画美学校試写室
東京都渋谷区円山町1-5
KINOHAUS地下1階
(渋谷・文化村前交差点左折・ユーロスペース下)

■企画

夏目深雪
金子遊

■主催

アテネ・フランセ文化センター

■協力

東京フィルメックス
トモ・スズキ・ジャパン
映画美学校
作品社