戦後、演劇的表現を排した、シネマ(映画)ならぬシネマトグラフと称する独自の表現を確立し、ヌーヴェル・ヴァーグにも影響を与えた巨匠ロベール・ブレッソン監督の長篇第一作。
フランス演劇界の大御所ジャン・ジロドゥが脚本に参加。ドミニコ会女子修道院を舞台に、篤い信仰心をもち、使命感に満ちたアンヌ=マリーと不幸な犯罪に手を染めた若い娘テレーズとの対峙を通じて、修道女たちの葛藤、憎しみ、友愛を描く。
『罪の天使たち』のアイデアは、ブレッソンがドイツの捕虜収容所に入れられていた1940年に、スイス出身のブリュックベルジェ神父の勧めで読んだ、M・H・ルロング神父の著作「牢獄のドミニコ会修道女たち(ベタニ)」(1938)に基づくと言われている。
撮影は、1943年2月8日から4月にかけてラディオ・シネマ撮影所で行われた。
アンヌ=マリー役のルネ・フォールは、コメディ・フランセーズの正座員。1942年にクリスチャン=ジャック監督と結婚した。テレーズ役のジャニ・オルトは、ルーマニア出身で、ジャン・ルノワール監督の『どん底』(1936)などに出演している。
ブレッソン監督の長篇第2作『ブローニュの森の貴婦人たち』(1945)やジャン・グレミヨン監督の『白い足』(1949)、マックス・オフュルス監督の『快楽』(1952)など数々のフランス映画の傑作を手がけたフィリップ・アゴスティーニが撮影を担当。音楽は、『ブローニュの森の貴婦人たち』の他、ジャック・ベッケル監督作品等で知られるジャン=ジャック・グリュネンヴァルト。