静岡県浜松市最北部の急峻な山の斜面に位置する過疎の村、大沢集落に取材し、村の人々の労働、生活、歴史などを彼らの声と身体を通して描き出す。山の褶曲部をなす狭小な空間に折り畳まれた記憶の層が、堀自身の撮影と編集により、丁寧に広げられ、また映画的な時空間として再構成される。これらの作業を通じて明らかになっていくのは、近代国家としての日本が明治以来、その歩みとともに、このような僻地にまで残していった爪痕である。5作品あわせると4時間以上にもなる作品群は、最短の2分(『山道商店前』)から最長の94分(『冬』)まで形式の上でもバラエティに富み、その内容も、村の特産品である製茶の作業工程(『製茶工場』)、祇園祭の日に合わせて年に一度花火を楽しむ風習(『祇園の日』)、季節ごとの風景と、古老が語る村の歴史(『夏』『冬』)、麓の交差点の信号機の定点観測(『山道商店前』)など非常に多岐にわたる。
5月後半の、新緑の季節に行なわれる大沢の急勾配での茶摘み、そして製茶までの工場での加工の様子を静かにとらえる。
2014年6月に撮影。祇園祭の日に合わせ年に一度花火を楽しむ「ぎおん」という風習の記録。撮影は2014年6月だが、『別所製茶工場』より前に完成した。
大沢集落の短い夏をとらえた作品。「製茶工場」の持ち主である別所賞吉さんの大沢についての話や思い出などのナレーションを含めながら、夏の大沢での生活を写す。
村人の別所賞吉さんのナレーションとともに集落の歴史や冬の生活が描かれる。彼岸の頃、麻布山頂から日が昇り、長い冬が終わりを迎え、大沢集落にまもなく春が訪れる。