スサーナ

Susana 1950年(86分)

監督・脚本/ルイス・ブニュエル

製作/マヌエル・レアチ セルヒオ・コーガン 脚本/マヌエル・レアチ ハイメ・サルバドール 撮影/ホセ・オルティス・ラモス 音楽/ラウル・ラビスタ

出演/フェルナンド・ソレール ロシータ・キンタナ ビクトル・マヌエル・メンドーサ

 季節はずれの嵐の夜、女子刑務所に入れられたスサーナ(ロシータ・キンタナ)は、陰惨な独房の雰囲気に脅え、床に映る格子の影を十字架に見立て神に祈る。すると奇蹟が起き、刑務所の窓の鉄格子が安々とはずれて脱走することができた。雨の中を走り抜けたスサーナがたどり着いたところは、ある大きな農場だった。こんな嵐の晩は、何か悪いことが起きるに違いない、と心配していた女中フェリサ(マリア・ヘンティル・アルコス)と主婦のカルメン(マルチデ・バロウ)が家の中にいた。二人は窓の外にずぶ濡れになったスサーナを見つけ、彼女を介抱する。
 農場を経営する、信仰深い一家の親切につけこんだスサーナは、偽りの身の上話を巧みにして信じこませ、まんまと居候で住みつくようになる。若く、美しいスサーナの存在は、淋しい田舎の農場に華が咲いたようだった。
 初めのうちはおとなしくしていたスサーナだったが、家長(フェルナンド・ソレール)を始め、息子アルベルトや使用人ヘスス(ビクトル・マヌエル・メンドーサ)を次々と誘惑してゆく。これ見よがしに肩を脱いで諸肌を見せ、スカートを捲りあげるスサーナのセックス・アピールに負けた男たちは、スサーナの気を引こうとして互いに敵意を燃やし、平和な家庭に不穏な空気が漂い始める。
 そんなある日、ヘススは、通りすがりの警官から、脱走した女囚の話を聞かされる。その女囚がスサーナであることを直感したヘススは、主人には内緒にし、それを口実に彼女に近づこうとする。しかし、色仕掛けの罪にはまった家長を唆して妻カルメンを離縁させ、その後釜に坐ろうと画策していた彼女は、ヘススを適当にあしらって相手にしない。それどころか、その様子を誤解して嫉妬した家長は、長年奉公してきたヘススをくびにしてしまう。
 人のいいカルメンは、夫の様子が変わってきたことに気づきながらも、じっと耐えていた。だが、純粋で世間知らずな息子アルベルトまでが、スサーナにすっかり心を奪われてしまっているのを知って、とうとう我慢できなくなる。フェリサに唆され、激情に駆られたカルメンは、鞭を持ってスサーナの部屋に入る。憑かれたようにスサーナを痛めつけるカルメン。スサーナの悲鳴を聞いて集まった一同の前へ、ヘススが警官を連れてやって来る。素性を明らかにしたスサーナを見て、家族たちはようやく目を覚ますことができた。
 そして翌朝。一家には昔どおりの秩序が戻り、いつものように和やかな朝食のテーブルについて神に感謝するのだった。