傑作「シチリア!」に続くストローブ=ユイレのあまりにも野心的な長編「労働者たち、農民たち」の主題は、題名の示唆する通り、労働者たちと農民たちの対立を超えた共生、そして人間と大地のエンペドクレス的な共生である。
原作はエリオ・ヴィットリーニの長編小説『メッシーナの女たち』の独白体で構成された第44章から第47章まで。季節は夏、舞台となるのは終戦後まもないイタリアの山中の村。映画に登場し証言するのは、社会的混乱の中、行き場をなくし、山中で新たな村を再建しつつある戦争難民たち12名であり、彼らがそれぞれ微妙に食い違う固有の観点から報告するのは、前年の秋からその年の初春にかけての苦難や対立とそれを乗り越えた喜びである。ただし、農民と労働者を演じる人々は撮影が行なわれた時代の服装のまま定点を動かず、「冬の出来事」の回想は具体的に映像化されることはない。人々は、基本的に「キャメラ=観客=判事」に向かい、ただ簡単な視線の移動や詩的な台詞を発語する口調によってそれぞれの役の言葉を演じるにすぎない。
撮影監督レナート・ベルタによる導入部の森の380度のパノラマ・ショットは「奇跡のショット」と呼んでも過言ではない。この映画の僅か69のカットは、木の葉に当たる太陽光の驚くほど豊かな変化、せせらぎの音や鳥のさえずりを鮮烈に「刻印」し、圧倒的な「土地の霊力」を伝える。
ここには、顕在化された事実を捉える映画技術と虚構を構築する演劇の新たな関係がある。今やすべては行なわれてしまったかのように思われる「劇映画」の領域において、この作品はあらゆる意味で映画に対する根源的な問いを突きつける恐るべき問題作である。