ランサム世界

World for Ransom 1953年(82分)

監督/ロバート・アルドリッチ

脚本/リンゼイ・ハーディー 撮影/ジョゼフ・F・パイロック

出演/ダン・デュリエ(マイク・キャラハン) ジーン・ロックハート(アレックス・ペダラス) パトリック・ノワレス(ジュリアン・マーチ) マリアン・カー(フレネシー・マーチ) 

(あらすじ)
 第2次大戦後のシンガポール。私立探偵マイク・キャラハンに、ある男から一つの依頼があった。その依頼により、かつての恋敵であり友人だったジュリアン・マーチが、暗黒街を牛耳っているペタラスと組んで、核物理学者オコナー教授を誘拐し、莫大な身代金を手に入れようと企んでいる事を知る。マイクはジュリアンに深入りするなと忠告するが、ジュリアンは聞き入れずに陸軍隊長になりすまし、教授を飛行場から誘拐することに成功する。
 しかしその時、マイクの情報提供者である写真屋ウォンに、証拠写真を撮られてしまう。危険を感じたペタラスは、マーチも一緒にある島の廃村に身を隠すよう命じる。翌日、一味のグージックによりウォンが殺害される。しかし凶器となったジュリアンのペーパーナイフから、マイクの指紋が発見され、証拠抹消のためにマイクが殺人を犯したことになってしまう。その上取り調べのためにマイクの部屋へやってきた警部が、例の証拠写真を発見してしまう。マイクは警部を殴りとばし、ジュリアンの妻であり、かつての恋人であるフレネシーの元へ逃亡するのだった。
 マイクから事情を聞いたフレネシーは、組織から夫ジュリアンを連れ戻して欲しいと懇願する。マイクは今でもフレネシーを愛していると告白するが、ジュリアンは必ず彼女の元へ帰すとも約束するのだった。単独廃村へ向かうマイクを、密かに陸軍少佐のボーンが追ってくる。ボーンの行動に気付いたマイクであるが、2人は意気投合し、力を合わせて隠れ家へと乗り込む。しかし激しい銃撃戦の中、ボーンは撃たれ、倒れてしまう。マイクは手榴弾を持ってグージックの部屋へ乗り込み、教授とジュリアンを引き渡すよう迫る。そしてジュリアンに、グージックを殺して教授と3人で逃げるしか道はないと告げる。「チャンスをいかせ!」その言葉に勇気づけられて、グージックの一味を撃ったジュリアンであったが、その銃口はマイクにも向けられた。手柄を独り占めしたいという、欲望を押さえられないジュリアンはマイクをも殺そうとする。マイクは間一髪のところで、手榴弾を投げ込み難を逃れるが、ジュリアンは死亡してしまう。そこへボーンの部下がやって来る。別室に軟禁状態にされていた教授の無事を確認して、マイクは独り去っていく。
 フレネシーの所へ戻ったマイクは真実を告げ、そして昔の関係を取り戻したいと懇願する。しかしフレネシーは、マイクが夫ジュリアンを殺したと責め、関係を取り戻すことは不可能だと言い放ち、彼女の身の上を告白する。実はフレネシーは同性愛者であり、ジュリアンは全てを承知した上で、なおかつ彼女を受け入れていたのだ。その愛があるからこそ、一緒に旨く暮らしていけたのだと……。意外な事実に動揺したマイクは、そのままフレネシーの元を去り、独りシンガポールの街をさまよい歩くのだった。