ロシアの文豪トルストイの原作に基づく孤高の映画作家ロベール・ブレッソンの遺作にして、驚嘆すべき傑作。金銭(ラルジャン)がきっかけで悪への道に誘惑される人間の末路を透徹した視線で凝視する。抑制された台詞と身ぶり、単純で優雅な画面設計、大胆な場面の省略。一切の無駄がなく、それでいてあらゆる瞬間に緊張が満ちた、崇高で、唯一無比の、まさに映画が到達した芸術の極致。1983年カンヌ映画祭創造大賞。