三つの恋の物語

The Story of Three loves 1953年(122分)

監督/ヴィンセント・ミネリ ゴットフリート・ラインハルト

出演/ジェームス・メイスン カーク・ダグラス

 『哀愁』のシドニー・フランクリンが製作した三つのエピソードを集めたオムニバス映画で、テクニカラーの1953年作品。第一話『嫉妬深い恋人』は『奥様は顔が二つ』の制作者ゴトフリート・ラインハルトが監督にあたり、脚本は『山のロザンナ』のジョン・コリア。主演は『五本の指』のジェームス・メイスン、『ホフマン物語』のモイラ・シアラー、『ショウ・ボート』のアグネス・ムアヘッド。第二話『マドモワゼル』は『可愛い配当』のヴィンセント・ミネリが監督。アーノルド・フィリップスの原作を『フォーサイト家の女』のジャン・ラスティグと『血闘』のジョージ・フローシェルが共同脚色した。主演は『巴里のアメリカ人』のレスリー・キャロン、『見知らぬ乗客』のファーリー・グレンジャー、『脱獄者の秘密』のエセル・バリモアで、『赤い風車』のザ・ザ・ゲイバー、子役のリッキー・ネルスンとドナ・コーコランらが助演。第三話『均衡』は第一話と同じくゴットフリート・ラインハルトが監督しジョン・コリアが脚色している。ラディスラス・ヴァイダとジャック・マレの原作を、第二話の脚色チーム、ジョン・ラスティとジョージ・フローシェルが潤色した。『探偵物語』のカーク・ダグラスと『明日では遅すぎる』のピア・アンジェリが主演し、『血闘』のリチャード・アンダースンが助演する。三編を通じて撮影は『血闘』のチャールズ・ロシャーと『雨に唄えば』のハロルド・ロッスンの二人、音楽は『黒騎士』のミクロス・ロジャの担当。

(あらすじ)
 ニューヨークへ向かう大西洋航路の豪華客船上のこと、著名な舞踏監督チャールス・カウトレイ(J・メイスン)は、彼の新作バレエ「アスタート」が初日だけで幕を閉じた理由をある青年から訊ねられた。彼に、これにまつわる悲しい想い出がよみがえって来た。

[嫉妬深い恋人]ロンドンのある劇場で舞台稽古中のこと、カウトレイの目の前で夢中になって踊っていたバレリーナのポーラ(M・シアラー)が突然倒れた。彼女は心臓が悪く、医者からの忠告で練習を控えなければならなかった。バレエ「アスタート」の初日、小屋のはねた後、カウトレイは人気のない舞台でひとり熱心に踊っているポーラを見つけた。「アスタート」を不満に思っていた彼は、彼女の踊りに霊感を得、その夜彼女を自分のスタジオに連れてきた。ポーラは彼の指導を受けながら、魅せられたように踊りまくった。二人の芸術上の共感はそのまま愛情に変わった。しかし、その夜の踊りは彼女の死の踊りでもあった。翌朝、カウトレイはポーラの死んだことを知った。―船の上、少女の足音にカウトレイは我にかえった。そこへ少女の家庭教師であるマドモアゼル(L・キャロン)と呼ばれる若い女が来た。彼女にも不思議な想い出があった。

[マドモアゼル]彼女はローマで、米国の外交官キャンベル家のフランス語家庭教師として雇われていた。一人息子の少年トミイはフランス語の勉強が大嫌いで、彼女をうとましく思っていた。トミイはある日、魔法使いだと言われているペニコット老婦人(E・バリモア)と知り合い、夫人にもう勉強しなくてもいいように大人にしてもらいたいと頼んだ。夫人は夜の八時から十二時まで願いを叶えてあげようと魔法のリボンをくれた。青年になったトミイ(F・グレンジャー)は、公園でマドモアゼルに会った。二人は星空の下でいつしか愛情を感じ始めた。だがキャンベル家は明朝ローマを去り、彼女も同行することになっていた。帰途、二人は明朝十時に駅で会う約束をした。翌朝、マドモアゼルは青年を待ち続けたが彼は現れなかった。涙にぬれた彼女はひとりローマにとどまる決心をしたが、そこへペニコット夫人が現れ、いつまでも待たないほうはいいと言い魔法のリボンを手渡し立ち去った。―デッキで想い出にふける彼女に声をかける青年(R・ホートン)があった。彼女にとっては見ず知らずの青年だったが、彼は彼女がローマのプラットホームに居たことを知っていた。彼はいつの間にかマドモアゼルの落としたリボンを拾っていたのだ。青年は彼女を夕食に誘った。この二人のそばで海を見つめていたピエール・ナーヴァル(K・ダグラス)も不思議な恋の経験を持っていた。

[均衡]彼はパリで身投げした女を助けた。彼女はニーナ(P・アンジェリ)といい、スキーのジャンパーだった。ピエールは空中曲芸師で、数年前パートナーの女を事故で失ってから、サーカスを断念したかに見えたが、ニーナを知って再び希望に燃え立った。ニーナは彼の申し出を受けパートナーになった。激しい訓練を経て、ニーナは立派な曲芸師になり、ある日アメリカから来た興行師の前で空中曲芸を見せることになった。いよいよ始まろうという時、ピエールは不安におそわれた。空中曲芸師には禁物の恋愛感情を、彼はニーナに感じていたのだ。だがニーナは平然と演じとおし、契約は成立し、二人はいま渡米の途にあるのだ。