1947年、安中榛名生まれの首くくり栲象(本名・古澤栲)は、71年から、自死の行為を反復する。2003年8月16日、山梨県白州でそれを目撃した小笠原隆夫は、以後、05年、09年、10年と彼を撮影、インタビューを行う。涎をたらし苦吟する男は、やがてルオーの油絵「人は人にとって狼」(1948)の静謐へと至る。命懸けの戯れ。万物が重力に引かれることに抗うように、虚空に吊り下がる肢体が、エロスとタナトスの彼岸を浮遊する。