1949年、東京証券取引所が再開。故郷に戻っていた“ギューちゃん”は、再び兜町に舞い戻って株取引を開始する。戦後の日本経済は朝鮮戦争の特需景気もあって急速に発展。“ギューちゃん”も莫大な利益を得て、遂に取引所の正会員として認められるが……。足かけ二年にわたって制作された大ヒット・シリーズ最終作。本作が制作された1958年は、折しも日本映画界の観客動員数がピークを記録した年であった。
【「大番」四部作】
1956年より雑誌「週刊朝日」に連載されていた獅子文六(1893〜1969)の同名小説を映画化。
四国の寒村から“ギューちゃん”こと赤羽丑之助が裸一貫ならぬ浴衣一枚で上京し、兜町を舞台に株でひと旗あげるまでの立身出世を描いた相場版太閤記である。
獅子文六は戦前に近代劇の翻訳や戯曲を手がけたのち、ユーモア小説で人気を確立。戦後は「てんやわんや」「自由学校」「箱根山」などの小説が続々と映画化されたが、なかでも「大番」は小説でも映画でも日本中を熱狂させた代表作である。
本作が初の本格的主演となる加東大介。彼を支える恋人役の淡島千景。その他、多彩な登場人物たちが登場。彼らの生き生きとした姿、洒脱な会話、そして落差の激しい“ギューちゃん”の波瀾万丈の半生が、千葉泰樹監督の軽妙な演出と明朗なユーモアで描かれる。映画のあまりに過熱する人気に、原作の執筆が追いつかず、映画と原作が併走し、相乗効果を生み出した痛快無比の傑作シリーズである。