失った女への執着から妄想にとり憑かれ現実を見失った男。場末の繁華街で出会った少女は、男の妄想を優しく受け入れる。自他の境をうち消すように求め合う二人が現実を実感するのは、時限爆弾を用いた危険な遊びに興じているときだけだった……。雨や湿気、赤の意識的な配色、女が口ずさむ歌謡曲など細部に至るまで計算された視聴覚的効果が、観念的な物語の持続に貢献している。