『映画のメティエ』二部作(欧米篇・日本篇)の出版を記念して上映会を開いていただけることになった。もちろん、この二冊で扱った映画をすべて上映することなど不可能である。それで、セレクトした基準は、三点ある。一点は、現在上映することが困難な作品であること。たとえば、チャーリー・バワーズ。この天才の作品は、神戸映画資料館によって、3年前に本格的な紹介がおこなわれたが、すでに配給権が切れていて、今回特別に上映権をとったものである。とりわけ、「セレクション 2」の三作品は東京での初公開となる。二点は、私の映画体験史として、特別の思いがあるもの。ハリー・ラングドン『岡惚れハリー』、アラン・ドワン『当たり狂言』は、1920年代のサイレント作品だが、欧米篇序文で書いたように、映画史の奥深さを知らしめてくれた。三点は、50年代映画研究会の協力を得て、アテネ・フランセ文化センターで90年代に上映したもの。瀬川昌治、大和屋竺、それにスタンバーグ『アナタハン』がそうだが、根岸明美さんのトークを同じスクリーンに投影することで、33年の隔たりを超えた熱気を再現できるか。以上、私の映画体験に欠かせない作品を見ていただいた上で、観ることから撮ることに立場を変えた時代を語りたい。その時代で観れる・観せられる作品と、自分で探し回ることで観た作品の間に、自己の立脚点があると思うからである。
筒井武文(映画監督)