日本占領中に設立され、大規模な工業地域に変貌していった中国東北部瀋陽にある鉄西区。現在は廃れゆくこの地域を三部構成の中に描き出した9時間におよぶ超長編ドキュメンタリー。地域を限定し長い時間をかけて記録することにより中国社会が抱える現実をも浮き彫りにし、ワン・ビンの名前を世界に轟かせた伝説的作品。
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最新作『死霊魂』と同じく、劇映画『無言歌』のリサーチをきっかけに知り合った、老女、鳳鳴(フォンミン)のドキュメンタリー。1950年代後半の反右派闘争で数々の迫害を受け、ゴビ砂漠の収容所で夫を亡くしたひとりの女性の約30年にわたる物語が細部にわたる詳細な記憶で語られる。カメラに向かって語り続ける老女の姿に、中国現代史と映画の可能性が同時に交差する感動的な傑作。
© Wil Productions
ワン・ビン、ペドロ・コスタ、シャンタル・アケルマン、アピチャッポン・ウィーラセタクン、アイーシャ・アブラハム、ヴィセンテ・フェラスの6監督が、それぞれの視点による「世界」を描く。ワン・ビン編の『暴虐工廠』は、現代の工場と思われる風景が60年代の文革期における粛清の現場の記憶に繋がっていく。ワン・ビン初めての劇映画だが、『無言歌』への助走ともいえる迫力に満ちている。
掘り出された石炭が運ばれていく。中国北部、天津の大きな港に繋がる山西省の鉱山からの“石炭ロード”。100トンのトラックが、昼夜を問わず際限なく往復し、その道沿いには、売春婦、巡査、ごろつき、車庫のオーナー、整備士がいる。黒く汚れた石炭そのものを主人公に、労働と資本主義の関係性を、短い時間に凝縮した魅惑的なドキュメンタリー。
男はただ1人で荒れ野のような土地に開いた洞穴に暮らしている。男が日々行うのは、すべては「食べる」ことにつながる行為だ。ワン・ビンのキャメラは食べて眠ることを繰り返す男を、四季を通して撮り続ける。男は一言も口をきかず、カメラもまたただそこにいる。しかし、奇妙に目を離せない男の日常から、いつしか「生」と「人間」の根本が現れる。
ワン・ビン初の長編劇映画。反右派闘争によって粛清され、ゴビ砂漠の収容所に囚われている男たち。食料はほとんどなく、水のような粥をすする。圧倒的な風の音が全編を覆い、凄まじい飢餓の描写の中にひとかけらの尊厳を見つめる。最新作『死霊魂』で証言者が語る内容が劇映画として描かれ、両作品は合わせ鏡の関係にあると言える。
©2010 WIL PRODUCTIONS LES FILMS DE L'ETRANGER and ENTRE CHIEN ET LOUP
中国で最も貧しいと言われる雲南省の標高3200メートルの山村に暮らす幼い三姉妹。母は家出し、父は出稼ぎに。近くに親戚はいるものの、三姉妹は自分たちだけで生活している。やがて、町から父親が戻るのだが…。急激な経済的繁栄に沸く中国に厳然と存在する格差というテーマ以上に、三姉妹の輝くような生命力と仄暗い家の中でじゃがいもを食べ続ける神々しい姿に打ちふるえる。
©ALBUM Productions, Chinese Shadows
精神病患者1億人と言われる中国の精神病院で初めて撮影されたドキュメンタリー。何らかの理由で「異常」とされて病院に収容されている男たち。中庭を囲む回廊。病室のいくつものドア。スクリーンと客席の境を忘れさせるカメラは、やがて患者たちが愛を求める姿を映しはじめ、何が異常で何が正常なのか、そんな境さえも消し去ってしまう
© Wang Bing and Y. Production
出稼ぎ労働者が住民の80%を占める浙江省の町。雲南省出身の15歳の少女シャオミンは、バスと列車を乗り継いでやってきた。14憶が生きる巨大中国の片隅で、1元(約16円)の金に一喜一憂する出稼ぎ労働者のたちの人生を描き、ドキュメンタリーでありながらヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を受賞。
©2016 Gladys Glover-House on Fire-Chinese Shadows-WIL Productions