佐藤真監督特集2021 その検証と継承 作品解説

阿賀に生きる

阿賀に生きる

1992年/115分/16mm
監督:佐藤真
撮影:小林茂

新潟水俣病の舞台ともなった阿賀野川流域に暮らす人々を、三年間にわたって撮影。 新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごとフィルムに感光したエンターテインメント・ドキュメンタリーの傑作。

まひるのほし
©︎「まひるのほし」製作
委員会 1998年

まひるのほし

1998/93分/35mm
監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎
録音:久保田幸雄

登場するのは7人のアーティストたち。彼らは、知的障害者と呼ばれる人たちでもある。神戸・武庫川すずかげ作業所、神奈川県平塚・工房絵(かい)、滋賀県信楽・信楽青年寮で、創作に取り組む彼らの活動を通し、芸術表現の根底に迫るドキュメンタリー。

SELF AND OTHERS
©︎牛腸茂雄

SELF AND OTHERS

2000年/53分/16mm
監督:佐藤真
撮影:田村正毅
声:西島秀俊 牛腸茂雄 
スチール:三浦和人

1983年、3冊の作品集を残し36歳で夭逝した写真家、牛腸茂雄。記憶に深く食いこみ、魂を揺さぶるような力を備えている牛腸茂雄の写真。残された草稿や手紙と写真、肉声をコラージュし、写真家の評伝でも作家論でもない新しい映像のイメージを提示した作品。

表現という快楽

表現という快楽

2001年/30分/デジタル
監督・録音:佐藤真
撮影:大津幸四郎

2001年に、O美術館とヨコハマポートサイドギャラリーで開催された「二十一世紀アートのエネルギーをみる展」のために制作。佐藤真監督作品『花子』の展覧会での上映・シンポジウムと合わせて展示された「障害者アート」の作家たちの制作風景を撮影。

花子
©︎シグロ、2001年
写真 ©Rinko Kawauchi

花子

2001年/60分/35mm
監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎
編集:秦岳志

京都に暮らす花子は、知的障害者のためのデイセンターに通う一方、夕食後には畳をキャンバスにたべものを絵の具のように並べるという日課を欠かさない。母は6年に渡ってその「たべものアート」を写真に撮り続けてきた。花子と彼女を取り巻く家族の物語。

阿賀の記憶

阿賀の記憶

2004年/55分/16mm
監督:佐藤真
撮影:小林茂
編集:秦岳志

『阿賀に生きる』から10年。かつて映画に登場した人々や土地に再びカメラを向け、人々が残した痕跡に10年前の映画作りの記憶を重ねていく。人々と土地をめぐる記憶と痕跡に向き合い、過去と現在を繊細かつ大胆に見つめた詩的ドキュメンタリー。

エドワード・サイード
©シグロ 2005

エドワード・サイード OUT OF PLACE

2005年/137分/35mm
監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎 栗原朗 佐藤真
編集:秦岳志

2003年9月、パレスティナ出身の世界的知識人、エドワード・サイードが亡くなった。サイードの精神の在り処を求めて映画の旅が始まる。イスラエル・アラブ双方の知識人たちの証言を道標に、サイードの意志と記憶を辿る。

廻り神楽
©︎ヴィジュアルフォークロア

廻り神楽

2017/94分/デジタル
監督:遠藤協 大澤未来
撮影:明石太郎、戸谷健吾
出演:黒森神楽保存会
語り:一条みゆ希
昔話朗読:森田美樹子

歴史上、幾度も津波の被害に見舞われて来た三陸の地で340年以上にわたり巡行を続けてきた黒森神楽。海辺に住む人々の精神文化を支えてきたこの神楽は、東日本大震災後も神楽衆によって再開。沿岸の村落をめぐる。佐藤真が高く評価した野田真吉の『冬の夜の神々の宴』(1970)につらなる「民俗映画」の新しい波を予感させる秀作。毎日映画コンクール・ドキュメンタリー賞受賞作。

はだしのゲンが見たヒロシマ
©2011 シグロ、
トモコーポレーション

はだしのゲンが見たヒロシマ

2011年/77分/デジタル
監督:石田優子
撮影:大津幸四郎
出演:中沢啓治(漫画家/『はだしのゲン』作者)
聞き手:渡部朋子

佐藤真監督『エドワード・サイードOUT OF PLACE』の助監督をつとめた石田優子の第1回監督作品。漫画家・中沢啓治の代表作『はだしのゲン』は、作者自身の被爆体験を基に作品化され、国内外で高く評価されている。晩年の中沢が、被爆地ヒロシマで証言を交えながら自らの半生を語る姿を、土本典昭監督「水俣」シリーズのキャメラマン大津幸四郎が撮った貴重なドキュメンタリー。第17回平和・共同ジャーナリスト基金審査員特別賞受賞作。

未来をなぞる・写真家畠山直哉
©miraiwonazoru

未来をなぞる・写真家畠山直哉

2015年/87分/デジタル
監督・撮影・編集:畠山容平
出演:畠山直哉

『テレビに挑戦した男・牛山純一』(企画:佐藤真)を監督した畠山容平が、ヴェネツィア・ビエンナーレなどにも展示された世界的な写真家畠山直哉を描いた意欲作。写真集『ライムワークス』『アンダーグラウンド』でも知られる畠山直哉は、2011年の東日本大震災の後に、自身の出身地である陸前高田にキャメラを向ける。その2年間の創作活動に密着した畠山容平の平成17年度文化庁映画賞優秀賞受賞作。

牧師といのちの崖

牧師といのちの崖

2018年/100分/デジタル
監督・撮影・編集:加瀬澤充
プロデューサー:煙草谷有希子
音響:菊池信之
出演:藤藪庸一(牧師)

和歌山県白浜町にある観光名所・三段壁。時に自殺志願者も訪れるこの地で「いのちの電話」を運営し、彼らを死の淵から救おうとする牧師・藤藪庸一とその活動に密着したドキュメンタリー。佐藤真との交流の中で園舎も園庭もない幼稚園を描いた『あおぞら』(2001)を監督して以来、テレビドキュメンタリーの演出してきた加瀬澤充が17年ぶりに監督した映画作品。加瀬澤は「この作品を作ることで佐藤さんと会話したかったかもしれない」と語っている。

波のした、土のうえ
©︎Komori Haruka +
Seo Natsumi

波のした、土のうえ

2014年/68分/デジタル
監督:小森はるか+瀬尾夏美
撮影・編集:小森はるか
テキスト:瀬尾夏美
出演:阿部裕美 鈴木正春 紺野勝代 瀬尾夏美

東日本大震災後の東北を拠点に、アートユニットとして創作活動を続ける映像作家小森はるかと画家で作家の瀬尾夏美。 陸前高田で撮影をされた本作は、復興工事がすすみ、かつての痕跡すら失われて行く地域の人々の語りを、瀬尾がテキスト化。話し手自身による朗読に小森が撮影した映像が重ねられる。記録と記憶のあわいに「編まれた」瑞々しい現代映画。

ソレイユのこどもたち
©Yoichiro Okutani

ソレイユのこどもたち

2013年/104分/デジタル
監督・撮影・編集:奥谷洋一郎

佐藤真が遺した「ドキュメンタリー・トウキョウ」の構想に応えるべく奥谷洋一郎が監督した山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波部門特別賞」受賞作。多摩川が東京湾に流れ込む河口の廃船で暮らすひとりの老人と彼が共に暮らす「ソレイユ (太陽)」と名付けられた犬の日常を的確なショットで静かに見つめた作品。「ぬえ(伝説上の動物) のようにとらえどころのない巨大都市」と佐藤が語った東京の姿にかすかに触れた秀作。