ストローブ=ユイレの処女短編。ハインリヒ・ベルの短編「首都日誌」に基づき、西ドイツの首都ボンを舞台に、元ナチの軍人マホルカ=ムフを通し、戦後の再軍備をユーモラスに風刺する。主演は作家・ジャーナリストのエーリヒ・クービー。
複数の時制が交錯する、ベルの長編小説「九時半の玉突き」を、55分に圧縮再構成。ケルンのある現在時の一日を中心に、三世代にまたがる建築家一族の数奇な歴史を語りながら、戦後も権力を掌握し続ける旧ナチ関係者を痛烈に風刺する。
10数年の構想を経て実現したストローブ=ユイレの原点となる野心作。バロック期の大作曲家J・S・バッハの後半生を、演奏場面を中心に妻の視点から語る。古楽器演奏の大家グスタフ・レオンハルトが大バッハに扮し、見事な演奏を披露する。
オーストリアの劇作家フェルディナント・ブルックナーの三幕戯曲「青春の病」を約10分に圧縮したミュンヘンでのストローブ演出の舞台上演の映像に続き、その出演女優の結婚式とその後の顛末が描かれる。R・W・ファスビンダーらが出演。
17世紀フランス・バロック演劇の大作家ピエール・ コルネイユの埋もれた悲劇「オトン」を、現代のローマの廃墟で、フランス語の不得手な素人が演じる。暴君ネロ亡き後の混迷する帝政ローマの政略劇が、恋の駆け引きを交えて語られる。
「レウコとの対話」の1篇、エンデュミオンと見知らぬ者の対話「野獣」の映画化。監督名義はストローブ単独である。パヴェーゼ生誕100周年の2008年に公開予定だったが、2009年に延期された。出演は『あの彼らの出会い』のダリオ・マルコンチーニとアンドレア・バッチ。
ジャン・ブリカールは1932年にロワール河近辺で生まれ、その地域で暮らし、92年に引退するまでヴェルト島の砂質採取事業の責任者だった。ドイツ占領期などの過去を振り返る彼の談話は、1994年2月24日に社会学者ジャン=イヴ・プチトーが録音したものである。
「レウコとの対話」の1篇、魔女キルケーと女神レウコテアーの対話「魔女」の映画化。仏語題「女だけで」は同じパヴェーゼ原作のアントニオーニ『女ともだち』(1955)の仏語題。ジョヴァンナ・ダッディ、ジョヴァネッラ・ジュリアーニ出演。
2009年7月8日、34歳の活動家、映画作家ジョアシャン・ガッティはモントルイユでデモ活動中、警官にフラッシュボールのゴム弾で撃たれ、片目が破裂し、視力を失った。本作では、事故以前の彼の写真にルソーのテクストがかぶさる。
副題「ローマ、私が恨む唯一のもの」。コルネリア・ガイサーがコルネイユの「オラース」第4幕第5場と「オトン」の短い一節を読む。その後、ブレヒトのラジオ劇「ルクルスの審問」が読まれる。編集の異なる3ヴァージョン上映。
ダンテ「神曲」天国篇・最終第33歌、第67節「おお至高の光」から最後までを、ジョルジョ・パッセローネが朗読する。冒頭の黒味にシェルヒェン指揮、エドガー・ヴァレーズ「砂漠」初演ライブ演奏(1954)が流れる。
バレスの「東方の砦」三部作の第一作「ドイツに仕えて」の抜粋に基づき、アルザス守護聖人の修道院がある聖オディル山でデジタル撮影。ストローブ自らロレーヌ人に扮し、ジョゼフ・ロトネール扮するアルザス青年と対話する。
フランツ・カフカの寓話短編の映画化。音楽はジョルジュ・クルターグ「カフカ断章」作品24(1986)第四部第39曲「またもや、またもや」。出演はバルバラ・ウルリヒとジョルジョ・パッセロー二。ストローブが声のみ出演。
「レウコとの対話」の1篇の映画化。吟遊詩人オルペウスを八つ裂きにする運命にあるバッケー(酩酊する狂暴なトラーキアの女)の一人にジョヴァンナ・ダッディ、最愛の妻エウリュディケーを亡くしたオルペウスにアンドレーア・バッチ。
「レウコとの対話」の一篇に基づく。女狩人アタランテーを含む勇士らと猪狩りに参加した王の息子メレアグロスは、母親アルターアーの呪いで殺された。ヘルメースにジョヴァンナ・ダッディ、メレアグロスにダリオ・マルコンチーニ。
モンテーニュ学者アルマンゴーにより1934年にパリに寄贈され、ソルボンヌ大学北のポール・パンルヴェ小公園にあるポール・ランドフスキ作のモンテーニュの坐像の近くで、『エセー』第2巻第6章「実習について」がバルバラ・ウルリヒにより朗読される。
ヴェネツィア国際映画祭の第70回目を記念する連作動画『ヴェネツィア70:リロードされた未来』の一篇。バレスの旅行記「ヴェネツィアの死」第3章「アドリア海の水平線上に漂う影たち」の頁の一部とメモが映し出される。
ストローブ=ユイレが1954年に映画化を構想したという、ベルナノスの1928年の同名小説に基づく。一組の男女あるいは彼らの影が木陰で対話する。パリで稽古された後、ノルマンディのフレール近郊で撮影された。フランソワーズ役はコルネリア・ガイサー、ジャック役はベルトラン・ブルデールが演じる。
河岸の木と枝の長廻し2ショットに重ね、バレスの旅行記「愛と悲しみの聖地」(1903)の1篇「ヴェネツィアの死」第3章「アドリア海の水平線上に漂う影たち」の一節が読まれる。ナポレオン、ゲーテ、シャトーブリアンの歴史的記憶。最後に『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1968)よりカンタータ BWV205のアリアが演奏される。
2014年スイスのロールでCanon5Dで撮り下ろした、マルローの同名小説(1935)に基づく「侮蔑の時代」に、ストローブ=ユイレの旧作5本『労働者たち、農民たち』『フォルティーニ/シナイの犬たち』『早すぎる、遅すぎる』『エンペドクレスの死』『黒い罪』からの抜粋を加えた6部構成の作品。
精神分析医ジャン・サンドレットの2014年の談話に基づくひとつの情景を再現した短編。初対面の精神科医に拳銃を向ける、精神を病んだ男は、アルジェリア戦争で現地人の村を焼き払うよう命じた上官の中尉を殺したと語る。医師はその後25年かけて彼の心的外傷後ストレス障害を治療した。
パリの東洋料理店の金魚の水槽の映像に続き、精神分析家エメ・アグネルがマルローの小説「アルテンブルクのクルミの木」第二部の一節を読み上げ、最後にルノワールの映画『ラ・マルセイエーズ』の抜粋が引用される。
2015年4月1日、スイスのシュタートキノ・バーゼルで撮影監督レナート・ベルタの70歳の誕生日を祝うために作られた。ベルタがウーゴ・ピッコーネと共同で撮影監督を手がけた『オトン』の抜粋と撮影現場の写真で構成。
2014年9月以後、ポンピドゥ・センターが企画に関連する映画作家に発注している動画コレクション「目下の進捗状況は?」の1本として、ストローブとユイレの全作品上映に際し、ストローブが自宅で猫たちを撮った動画。
スイスのレマン湖。ひとりの男が、同地出身のジャニーヌ・マサールの小説『湖の人びと』(2013)より、1942年に対岸フランスの対独抵抗運動に協力し、1944年に社会党の地元支部を結成した、同地の漁師の軌跡を朗読する。
科学技術で人民を統制する英・米・ソ連それぞれの帝国主義を批判し、自由を尊重するフランスを擁護したジョルジュ・ベルナノスの1945年の政治煽動文の一節を湖畔を歩く男が暗誦。各国が感染症対策を強化する2020年4月5日にネット上で公開された。