ニコラス・レイの長編デビュー作。刑務所を脱獄したボウイは、仲間が用意してくれた隠れ家で、キーチという少女と出会い、恋に落ちる。二人は銀行強盗を繰り返しながら生活をしていたが、警察の捜査の手が彼らのすぐ近くまで忍び寄る。
原題もそりゃ素晴らしいが、この邦題も素晴らしい。そしてラストの撮影所の夜が、完全な闇に転ずる瞬間…これに涙しない人間は、今後一生映画を観なくてよろしい!(中原昌也)
イエスと二人のマリアをめぐる物語。救世主であると主張するイエスは周囲の人間には理解されず、狂人扱いされ冷遇されていた。そんな彼はマリアに守られながらマグダラのマリアへと惹かれていく。ニコが楽曲を提供したことでも話題となった。
『イタリア旅行』が旅行でなく、倦怠夫婦の魂の彷徨いだったように、旅する映画よりもただただ、彷徨う映画が観たいんだよ!それたげで、映画は単なる旅情よりも、感情移入以上のものを与えてくれる。(中原昌也)
1970年、米国は反政府主義者たちを刑務所へ収容していたが、収容人数が限界に来たため、彼らに服役するか、人間狩りの標的として公園で3日間過ごすかを迫る。フェイク・ドキュメンタリーの巨匠、ワトキンスによる問題作。
堀の中も外も同じ…また映画の中も外も。ウィトキンのフェイク・ドキュメントは、他のお遊びみたいなのと完全に一線を画する。笑えない。(中原昌也)
ニューヨークでキャリアをスタートさせ、その後ロンドンで実験映画会の中心的人物となったドウスキンが、当時駆け出しの俳優で脚本家のクリストファー・ウィルキンソンの戯曲を脚色。女性ストリッパーたちのダンスとそれを見る男性観客を映し出す。
ギャビン・ブライヤーズの謎スコアに乗せて、アングラストリップの饗宴が放つ、強烈なアシッド感にひたすら打ちのめされる至福の120分。(中原昌也)
フラナリー・オコナーの長編デビュー小説を映画化。軍を退役したばかりの主人公ヘイゼルが、トルキンハムという小都市で、キリストなき教会を設立しようと奮闘するが…。オコナーが抱くカトリック教会への独自の見解を鮮やかに反映させた異色作。
ヒューストンの幻の名作が、ついに字幕付きで!原作がフラナリー・オコナー『賢い血』(すべてのアメリカの小説で最も愛してる…が、現在絶版)に、主演がブラッド・ドゥーリフだよ!これほど陽気に呪われている映画は観たことがない!再映画化版『キラー・インサイド・ミー』はこれのパクリかと思われる。(中原昌也)
©金東遠
1998年2月の金綺泳監督の死後、同年10月に初公開された幻の遺作。お互いの夫を破滅させるために、ある計画を立てるふたりの女の物語。卑小にして猥雑な人間たちの営みに被さるように響く漢江の架橋工事の槌音が、強烈な印象を残す。
どんな体験だよ?!って興味を持ったら負けだ。石井隆じゃない!子孫を残すことに異常な執念を燃やす女たちに狂走ぶりを目撃すれば、確かにもう死んでもいいかも!(中原昌也)