最新監督作『皆さま、ごきげんよう』公開記念 オタール・イオセリアーニ監督特集2016

四月

四月
აპრილი

1962年 48分 35㎜版
監督・共同脚本・編集:オタール・イオセリアーニ
撮影:ユーリ・フェドネフ 音楽:スルハン・ナシーゼ
出演:ギア・チラカーゼ、タニア・チャントゥリア

体制批判的という理由で公開禁止となり、1965年に作られた30分の短縮版が1970年代初頭に公開された。2000年のカンヌ映画祭で修復版が上映された。画一的な集合住宅に入居した若夫婦の部屋は森を伐採して作られた新品の木製家具や電化製品に占領される。停電になった満月の夜、夫婦は恋人時代の安らぎを思い出す。

落葉

落葉
Giorgobistve

1966年  96分 ロシア語ヴォイスオーヴァー35㎜版
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
脚本:アミラン・チチナーゼ 撮影:アベサロム・マイスラーゼ
出演:ラマーズ・ギオルゴビアーニ マリーナ・カルツィヴァーゼ ゴギ・ハラバーゼ

原題『十一月』(新年が九月に始まった旧暦の古称。原義は「聖ゲオルギウスの月」)。ワイン醸造所の新人醸造技師ニコ(ラマーズ・ギオルゴビアーニ)は職人にも公平だが、出世主義者の同僚オタルは職人を見下す。共産党幹部の決めたノルマ達成のため、醸造主任は未成熟の樽の開封を決めるが、ニコは強硬に抵抗する。

歌うつぐみがおりました

歌うつぐみがおりました
იყო შაშვი მგალობელი

1970年 82分 35㎜版
監督・共同脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
音楽:テイムラズ・バクラーゼ
出演:ゲラ・カンデラキ ジャンスグ・カヒーゼ 

原題は、「昔々」と頭韻を、「恵み深い神様」と脚韻を踏んだ昔話の語り出しの句。トゥビリシ国立オペラ・バレエ劇場のティンパニ奏者で、器用で人なつっこい青年ギア(ゲラ・カンデラキ)のある一日は、指揮者、バレリーナ、母親、同僚のフルート奏者、親類の若い娘らとの束の間の出会いや行き違いに翻弄される。

田園詩

田園詩
პასტორალი

1975年 98分 35㎜版
監督・共同脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
音楽ティムラズ:バクラーゼ
出演:ナナ・イオセリアーニ ヌクリ・ダヴィタシヴィリ

公用語と異なるメグレル語が話されるジョージア西部の温暖湿潤なサメグレロ地方のコルホーズでトゥビリシの四重奏団の音楽家が夏合宿を過ごし、地元民と交流する。寄宿先はトゥビリシの有力者の部下カレの実家だ。やがてカレも四輪駆動車で帰郷する。カレの姪の少女エドゥキは自由で都会的な音楽家たちに憧れる。

月の寵児たち
Les favoris de la lune

1984年 101分 デジタル版=参考上映
監督・共同脚本・台詞:オタール・イオセリアーニ
撮影:フィリップ・トディエール 音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:アリックス・ド・モンテギュ パスカル・オビエ ベルナール・エイゼンシッツ マチュー・アマルリック

共同脚本はジェラール・ブラッシュ。ナレーションや説明的台詞なしに、十八世紀末の絵皿と女性の裸体画の所有者が変転する経緯と共に、パリの女画廊主とその愛人の技師、銃砲店主、女美容師、警視、空き巣の父子、過激派の音楽教師、娼婦、暗殺者のアラブ人らの行動が主役と脇役の区別なくユーモラスに描かれる。

そして光ありき

そして光ありき
Et la Lumière fut 

1989年 105分デジタル版=参考上映
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ロベール・アラズラキ
音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:シガロン・サニャ サリー・バジー

旧フランス植民地のセネガルの森に住むディオラ族の村の牧歌的な生活を寓話風に描く。女祈祷師バディニャ、狩人の女ムゼズヴェ、怠け者の夫ストゥラと別れ、三人の子供を連れてイェレと再婚するオコノロ、青年ガグーと結ばれ、子供を産む若い娘ラズラ。一方、白人による森林伐採は進み、彼らの村に危機が迫る。

蝶採り

蝶採り
La Chasse aux Papillons

1992年 118分 35㎜版
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・リュプシャンスキ
音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:ナルダ・ブランシェ アレクサンドル・チョルカソフ アレクサンドラ・リーベルマン タマーラ・タラサシヴィリ

フランスの田舎の古城に住むロシア貴族の血を引く老女マリ=アニエスとその従姉妹ソランジュらの牧歌的で奔放な生活と、女主人の死と日本商社による古城の買収に伴うその終わりがユーモラスに描かれる。75歳でソランジュを演じたナルダ・ブランシェ(『ここに幸あり』主演のセヴランの母)は2010年に亡くなった。

群盗、第七章

群盗、第七章
Brigands, chapitre VII 

1996年 122分 35㎜版
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ロベール・アラズラキ
音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:アミラン・アミラナシヴィリ ダト・ゴジベダシヴィリ

中世のテュルク系のスルタン、十二世紀頃の正教徒の王、1916年の革命家で、革命期を経て1936年の大粛清時代に独裁的権力者となったヴァノ、1991年末から翌年始めまでの内戦後、パリに亡命した浮浪者の四つの役を、アミラン・アミラナシヴィリが演じる。どの時代にも野蛮な密告、拷問、暗殺、処刑が繰り返される。

素敵な歌と舟はゆく

素敵な歌と舟はゆく
Adieu, Plancher des Vaches! 

1999年 117分 35㎜版
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・リュプシャンスキ
音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:ニコ・タリエラシヴィリ オタール・イオセリアーニ リリ・ラヴィナ

原題『さらば陸地(おか)』。パリ郊外の屋敷に住む、実業家で社交家の妻、放蕩児の長男ニコラ、ジョージア系亡命者で酒と歌の好きな夫(イオセリアーニ)、小間使ヴァレリー、パリの貧しい列車清掃夫の青年、犬を連れた浮浪者、偽乞食の青年、カフェバーの看板娘らの入り組んだ関係と運命の変転が滑稽に描かれる。

月曜日に乾杯!

月曜日に乾杯!
Lundi Matin

2002年 127分 35㎜版­
監督・脚本・共同編集:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・リュプシャンスキ
音楽:ニコラス・ズラビシヴィリ
出演:ジャック・ビドウ アンヌ・クラヴズ=タルナヴスキ

原題『月曜日の朝』。南仏の田舎町の化学工場で働くヴァンサンは、老母と妻と二人の息子のいる家を出て、死期を迎えつつある病床の父に会いに行き、大金を貰い、父の命に従ってヴェネツィアで父の旧友エンツォ公爵(イオセリアーニ)と会った後、文無しとなり船旅に出る。主演は記録映画製作者のジャック・ビドゥ。