ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2022/上映作品解説

 ■インターナショナル・コンペティションより

カマグロガ

カマグロガ
Camagroga

スペイン/2020年/111分/Blu-ray
監督:アルフォンソ・アマドル

バレンシア地方で、古代エジプト時代から食用にされてきたタイガーナッツを代々生産してきた農家。家族で農作業を続ける姿を1年間丁寧に追った。時代の流れに抗いながら土を耕し続ける農家としての矜恃が、土地の歴史とともに伝わってくる。

YIDFF2021 山形市長賞

ナイト・ショット

ナイト・ショット
Night Shot

チリ/2019年/80分/Blu-ray
監督:カロリーナ・モスコソ・ブリセーニョ

8年前に、自身が被ったレイプ事件は加害者の容疑否認のまま不起訴となり、被害者の心身をさらに傷つけるような警察や医療機関に対する不信感だけが残された。映画学校の学生だった監督は、事件後も日記のようにカメラを廻す。性暴力を受けた心身をどう生きるのか、出口の見えない旅を始めた監督の到着地に見る者もともに立ち会う。

YIDFF2021 優秀賞

発見の年

発見の年
The Year of the Discovery

スペイン/2020年/200分/Blu-ray
監督:ルイス・ロペス・カラスコ

コロンブスのアメリカ大陸到達から500年を記念し、オリンピック、万博が開催された1992年のスペイン。祭典の裏で、社会はグローバル化の波を受け経済危機に陥った。当時デモに参加した労働者たちの語りと、生活に喘ぐ現代の若者たちの会話とが交錯する煙たいバルを撮影。緻密に構成された2分割画面に争議の生々しいアーカイヴ映像が挿入され、時を行き交いながら国家の成功神話に抗う。

彼女の名はエウローぺーだっ
た

彼女の名はエウローぺーだった
Her Name Was Europa

ドイツ/2020年/76分/Blu-ray
監督:アニア・ドルニーデン フアン・ダビド・ゴンサレス・モンロイ

家畜化された牛の先祖にあたる、絶滅した野生種オーロックス。この種を交配によって復活させようする試みが行われてきた。1920年代のドイツで復元の研究を行った動物学者の著作をたどりながら、新たな交配の試みや遺伝子研究の様子を追い、監督は新たな神話を語ろうとする。

核家族

核家族
Nuclear Family

アメリカ、シンガポール/2021年/93分/Blu-ray
監督:エリン・ウィルカーソン トラヴィス・ウィルカーソン

核戦争のイメージにさいなまれてきた映画監督が、家族を連れ、アメリカで核実験が行われた場所をめぐる。その想像力は、やがて長崎や福島にも及ぶ。核実験のアーカイヴ映像とサン・ラ・アーケストラの奏でる「ニュークリア・ウォー」が挿入され、人類と核の歴史、反復される暴力が問い直される。

ヌード・アット・ハート

ヌード・アット・ハート
Nude at Heart

日本、フランス/2021年/106分/DCP
監督:奥谷洋一郎

「踊り子」と呼ばれるストリップ劇場のダンサーは各地を巡り、楽屋で寝泊まりしながら10日ごとに次の土地へと移動する。舞台の袖で見せる素顔、楽屋での日常、ストリップに託す思い、家族への愛情、すべてが一期一会の風景の一部として記録される。『Odoriko』(2020)の国際共同製作版。

自画像:47KMのおとぎ話

自画像:47KMのおとぎ話
Self-Portrait: Fairy Tale in 47KM

中国/2021年/109分/Blu-ray
監督:章梦奇(ジャン・モンチー)

ヤマガタでお馴染みの「47KM」と呼ばれる中国山間部の小さな村を舞台とした連作の最新作。撮影を開始してから10年目を迎えるこの冬、村には新しい建物がつくられようとしていた。子どもたちはその「青い家」がどんなふうになったらいいかを想像し、絵に描く。少女たちはカメラを廻し、自分たちの村の姿を記録し始める。

 ■インターナショナルコンペティション関連作品

Odoriko

Odoriko
Odoriko

日本、アメリカ、フランス/2020年/114分/DCP
監督:奥谷洋一郎

YIDFF2021コンペ作品『ヌード・アット・ハート』のディレクターズ・カット版を特別上映。本作では踊り子たちの身体や身振り、彼女たちが過ごすかけがえのない時間の流れに、より肉薄する。2020年にフランスのドキュメンタリー映画祭「シネマ・デュ・レエル」でグランプリに次ぐ「スキャム国際賞」と、仏文化省が授与する「文化無形遺産賞」をW受賞。

自画像:47KMの窓

自画像:47KMの窓
Self-Portrait: Window in 47 KM

中国/2019年/110分/Blu-ray
監督:章梦奇(ジャン・モンチー)

監督が長期間にわたって撮影を続ける中国山間部の小さな村。革命に身を投じた半生を語る85歳の老人と、彼の追憶を似顔絵に写し取る少女。少女は村の老人たちを訪ね、個人史をしたためていく。『自画像』(YIDFF2021)監督作品。

YIDFF2019上映作品

誰が撃ったか考えてみたか?

誰が撃ったか考えてみたか?
Did You Wonder Who Fired the Gun?

アメリカ/2017年/90分/Blu-ray
監督:トラヴィス・ウィルカーソン

監督の曾祖父が1946年に起こしたアラバマ州での黒人男性射殺事件。監督は新聞記事を基に当時の状況を掘り起こし、家族の闇と事件の背後にある集団的差別意識の実相にサスペンスタッチで迫る。『核家族』(YIDFF2021)監督作品。

YIDFF2019上映作品

 ■特別招待作品&ウクライナの異邦人、キラ・ムラートワ

長い見送り

長い見送り
The Long Farewell

ソ連/1971年/93分/35mm
監督:キラ・ムラートワ

ムラートワ監督の叙情的な初期代表作。非教条的なため、旧ソ連当局に封印され、87年に初公開。技術翻訳者のシングルマザーの16歳の息子が彼女に反発し、別れた父との新生活を夢見るが、母は煩悶する。母と息子の複雑な愛情を描く。

YIDFF93上映作品

無気力症シンドローム

無気力症シンドローム
Asthenic Syndrome

ソ連/1989年/153分/Blu-ray
監督:キラ・ムラートワ

抑圧された現実の中で人格が崩壊し、正常な人間が欠陥のある人間へと変貌していく様を描いた2つの物語。ペレストロイカ興隆期のソビエト社会のあり方を描いた荒涼としたフレスコ画で、世界映画史に残る傑作。日本では、約30年ぶりの上映。

武漢、わたしはここにいる

武漢、わたしはここにいる
Wuhan, I Am Here

中国/2021年/153分/DCP
監督:蘭波(ラン・ボー)

2020年1月、劇映画撮影のために武漢に入った監督とクルー。都市封鎖に遭遇した彼らは路上で撮影を始め、無料で物資提供するボランティア活動に携わり、奔走する。新型コロナウイルス感染症により根本から変わってしまった日常を照射する。

 ■ともにあるCinema with Us 2021より

ふるさとに旅する

ふるさとに旅する
My Hometown

日本、オーストラリア/2015-2019年/101分/Blu-ray
監督:岩崎孝正

福島の現在と記憶を描くオムニバス。オーストリアの撮影クルー、日本と韓国のふたりの写真家を福島で追う『自然と兆候/4つの詩から』。記憶喪失の男と女の会話『Memories』。水俣、阿賀野、四日市、富山、相馬を旅する『カツテノミライ』。

千古里の空とマドレーヌ

千古里の空とマドレーヌ
Madeleine Dreams

日本/2021年/113分/Blu-ray
監督:我妻和樹

震災から1年後の南三陸町。被災した町に残った一軒のペンション。そこでお菓子づくりを再開したパティシエと、彼の夢に共感し、集まったボランティアたち。支援する・される関係性から生じる機微を見つめる。

10年後のまなざし

10年後のまなざし
Four Perspectives: A Decade After 3.11

日本/2021年/82分/Blu-ray
監督:村上浩康 山田徹 我妻和樹 海子揮一

「宮城の方々と震災10年という時間について考える機会を作りたい」と、「みやぎシネマクラドル」の4人が『冬歩き』『あいまいな喪失』『微力は無力ではない~ある災害ボランティアの記録』『海と石灰』からなるオムニバス映画を制作。

 ■日本プログラムより

私はおぼえている

私はおぼえている
I Remember

日本/2021年/224分/Blu-ray
監督:波田野州平

カメラを前に「おぼえていること」を語る10人の登場人物。戦前から現在まで、彼らが生まれ、育ち、働き、新しく家族を持ち、いまにいたる、それぞれの記憶の断片が鳥取の土地の記憶を伴い1本の映画となる。

 ■未来への映画便より

語る建築家

語る建築家
Talking Architect

韓国/2011年/95分/Blu-ray
監督:チョン・ジェウン

建築家は誰のために働くべきか、建築は社会の中でどのような役割を果たすべきか──末期癌と告知された建築家チョン・ギヨンに残された時間は少ないが、彼は止むことなく人々と対話を続ける。『子猫をお願い』チョン・ジェウン監督、初のドキュメンタリー。

若き孤独

若き孤独
Young Solitude

フランス/2018年/100分/DCP
監督::クレール・シモン

パリ郊外の高校に通う10代の若者たちがそれぞれの家庭環境や両親との関係、初恋、将来の夢を語り合う。孤独であること、そしてその状況を誰かと共有できること。不安や憧れ、悲しみや情熱といった感情の発見。