土本典昭は加担の作家である
佐藤真(映画作家)
「ミナマタのツチモト」として世界にその名を知られる土本典昭は、加担の作家である。水俣病闘争の希代のオルガナイザーとして反公害住民運動に加担しながら撮り続けられた水俣病の連作にとどまらず、土本の映画は常に現実に深く加担するが故に制度としての映画を凌駕する力を漲らせている。交通安全の宣伝を目的としながら、労働現場と組合運動に加担して撮った『ドキュメント路上』や『ある機関助士』は、PR映画の枠を瓦解させるアヴァンギャルドな傑作である。テレビ番組として企画された『留学生チュアスイリン』が反マレーシア的という政治的理由で製作中止となっても運動に加担し続けた土本は、急遽自主製作に切りかえ、自主独立ドキュメンタリーの嚆矢となった。その後一連の水俣シリーズで自主制作—自主上映のサイクルを完成させ、日本の自主ドキュメンタリー映画運動の一大牽引者として八面六臂の活躍を続けた後、土本は大胆にも8ミリビデオの私映画の作家に転進する。『回想・川本輝夫』は、水俣病患者のリーダー川本輝夫の追悼集会にあわせて「私家版」として撮られたビデオ日記であるが、フィルムからデジタルビデオへの時代の変遷に鋭く切り込む作品である。土本典昭は、対象にきちんと関わろうとする誠実さのあまり、状況と政治に深く加担し、その果てに映画のスタイルや方法論の変革にも加担する。そうした土本典昭の、時代と社会と映画の変革者としての足跡を、映画上映と対談によって、少しでもあきらかに出来たらと考える。