佐藤肇を再見する
木全公彦(映画評論家)
佐藤肇は日本映画史の中で特異な位置を占める。プログラム・ピクチュア全盛時代の1960年に東映で監督デビューしたにもかかわらず、監督した映画作品は13本という極めて少ない数で、そのうち11本が怪奇・SF・スリラー映画であることは、彼がいかに自分の趣味性に忠実であったかを裏付ける。だが、彼を早すぎたカルトと見做すことは正しくない。裕福な家に生まれ、若い頃から晩年まで熱心なシネフィルであったことは、彼を日本映画界では珍しい理論肌のディレッタントたらしめた。それこそが佐藤肇作品の魅力の核を形成するものである。この機会に、世界を席巻するJホラー・ブームにもつながる、その魅力の源泉を解明したい。