赤坂太輔 (映画批評家)
まず確認。堀禎一は天才なのだ。皆の思っていた映画が終わってしまった21世紀の今、どうすればこんな画面が撮れるのかとかこんな編集が可能なのかと彼に尋ねようと思ったとしても、あれこれ考える前に「だって堀禎一は天才だから」とアッサリ気づいたら、そう断言してしまえば悩み無用なのだ。だからヒトはただただ驚き続け、見惚れ続ければいい。今回惜しくも上映されないデビュー作『弁当屋の人妻 もう一品、私はいかがですか?』や、傑作『憐』を思い出しながら、天竜区シリーズによる彼の新たな出発を前にして、映画のダークマターを目にしてしまったのかと錯覚したとしても、決して誤りではないのだ。