ロマの映画監督の代名詞であるトニー・ガトリフの『ガッジョ・ディーロ』は、『ラッチョ・ドローム』に続いて有名な映画です。長年ルーマニアのロマのコミュニティーで言語学のフィールドワーク研究を行っている日本人の私は主人公の青年に自らを重ねることなしにこの映画を観ることができません。正真正銘の「ガッジョ・ディーロ(気のふれたよそ者)」として、この映画を通してロマの世界を内側から紹介したいと思います。 角悠介(言語学者、『ロマニ・コード 謎の民族ロマをめぐる冒険』著者)