渋谷哲也(ドイツ映画研究者)
戦後ドイツで初めて外国人労働者を取り上げたファスビンダーの映画『出稼ぎ野郎』(1969)以降、本作は初めて当事者の側から出稼ぎ労働者の内実を描き出した画期的な作品である。ロカルノ国際映画祭では銀獅子賞を受賞している。バーシェルはトルコ出身、ドイツで映画を学び本作が劇映画第一作である。妻役のフェヒトはジャズ歌手、夫役のオカイはトルコの名俳優、撮影アカイは巨匠ユルマズ・ギュネイのカメラを担当している。本作は国籍を超えた「映画」の結実だ。トゥルナを見舞う悲劇は、時に哀しく時にスリリングに観客の胸に迫ってくる。