夏目深雪(批評家)

「アジア映画で<世界>を見る 越境する映画、グローバルな文化」(作品社刊)は、「映画」と現実の「世界」の関係性を問題にしている。ここでは、それをさらに発展させ、アジアで最も先鋭的な監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンに関して、本書の執筆者二人が異なる視点からトークを行う。また本書のキーワードの一つである「政治性」という観点から、イスラエル映画史についての講義と、パレスチナ映画に関するトークを行い、対立する国家の映画表象から何が炙り出されるのかを探る。エドワード・ヤンのシンポジウムでは「過去の映画を読み直す」こと、また演劇批評家と映画監督という異種混合のセッションによる多角的な検討が、その全体像を豊かに照らし出すだろう。それらを統べる編者三人でのトークは、本書で行った様々な試みを検証する。それぞれが、アジア映画を通して「世界」を捉え直し切り拓く試みとなるはずだ。