木全公彦(映画批評家)
今年2012年は中華民国成立百年目を迎える年である。その記念すべき年に『アジアの曙』の一挙上映ができることを喜びたい。原作者である山中峯太郎(劇中では「中山」)は、辛亥革命の成果を簒奪した独裁者・袁世凱に反旗を翻した中国第二革命に参加した日本人であった。彼はこの経験を、のちに「亜細亜の曙」と題して「少年倶楽部」に書き、当時の軍国少年たちを熱狂させる。そして戦後に再び「実録・アジアの曙」という自伝に書き直して上梓する。それを大島渚が連続テレビシリーズとして映像化したのが本作である。
意気軒高に松竹を退社した大島渚とその一党だったが、彼らを取り巻く環境は厳しく、苦戦を強いられていた。そこで彼らはテレビに活動の拠点を移すが、ラディカルな問題意識はそのままテレビにも持ち込まれ、数々の優れた仕事を残した。『アジアの曙』はその集大成であった。60年安保後の日本の状況と自らの現状にダブらせながら、革命に生き、革命に斃れていった同志たちの姿を、熱い疼きをもって悲壮に描いたのだ。革命いまだ成らず。孫文の遺した言葉を引き継いだ大島渚一党の戦いは、今なお熱い。