「ドン・シーゲルの教え——インディペンデント映画作家の一つの系譜」
桑野仁(映画批評家)

 “The Last of the Independents”―『突破口!』の主人公が誇らしげに掲げるこの肩書は、他のシーゲル映画の一匹狼のアンチ・ヒーローたちにもそのまま当てはまると同時に、自らの自由と独立独歩の生きざまを守り抜くため、長年映画界で苦闘を繰り広げたシーゲルその人をも的確に言い表している。そして、「次は君たちの番だ!」という『ボディ・スナッチャー/盗まれた街』の主人公の悲痛な叫びは、カサヴェテス、ペキンパー、イーストウッドら、アメリカ映画の次世代を担う映画作家たちにしっかり受け止められて、今日まで闘いがなお継続していると言えるだろう。今回は主に1950年代から60年代にかけてのシーゲル映画を題材に取り上げながら、そのバトンの引き継ぎの様子を見極めてみたい。