「ガラスのマントの行方」
岡村民夫(表象文化論・温泉学)
宮沢賢治(1896-1933)の生涯は、シネマトグラフの出現からトーキーの普及にいたる時代とぴたりと重なる。作中に映画タイトル・監督・俳優への言及は見られない。だが、彼が映画による視聴覚の革命を深く被った作家だったことは、エクリチュールそのものにまがうかたなく刻印されている。だからこそ賢治童話の映画化はむずかしい。参考上映後、賢治が観たと思われる映画、生前の花巻を撮った記録映像、島耕二版『風の又三郎』等を振り返りながら、いかに「風」と「ガラスのマント」が継承され変容したのかをあとづける。