「ダニエル・マンワリングのスモールタウン・ナイトメア」
上島春彦(映画批評家)
無実の罪で排除される恐怖もあれば、有罪なのに告発されず大衆の前に顔をさらされ続ける恐怖もある。ダニエル・マンワリング(別名ジェフリー・ホームズ)が描いたのは、全員が顔見知りの田舎町に展開される、そんな悪夢の諸相ではなかったか。ドン・シーゲル『殺し屋ネルソン』『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』『裏切りの密輸船』、ジャック・ターナー『過去を逃れて』、ジョゼフ・ロージー『暴力の町』、アイダ・ルピノ『ヒッチハイカー』等のフィルムに脚本を提供しながら、自身はやがて酒に溺れ第一線から退いていくことになる脚本家の「知られざる」傑作を通して、50年代黄金期アメリカの裏側を見てみたい。いや、それが実は裏側ではなく超大国の真実の姿であることに、映画を見終わったあなたは気づくことになるだろう。