「スチュワーデス殺人事件と猪俣勝人」
木全公彦(映画批評家)
1959年3月、杉並区で英国海外航空の日本人スチュワーデスの他殺死体が発見された。重要参考人として浮上したのは、あろうことかカトリックのベルギー人神父だった。ところが、3ヶ月後、突如神父は出国し、事件は迷宮入りをする。この顛末に憤った脚本家・猪俣勝人は、自らの製作プロですぐさま事件を映画化する。だが、この田宮二郎の初主演作品は、即座に上映が打ち切られてしまう。同じ頃、ある作家がこの事件をモデルにして「黒い福音」という推理小説の雑誌連載を開始する……。事件の概要とそれを映像化した3作品、および猪俣勝人についてお話したいと思います。