「グリフィスの時間」
三浦哲哉(映画研究者)
『国民の創生』(1915)『イントレランス』(1916)というハリウッド建国の記念碑的なフィルムを作り「映画の父」と呼ばれるデヴィッド・W・グリフィス。ところで実際に前者が描くのは、喪失した理想郷である南部と、その亡霊的回帰としてのクー・クラックス・クランである。後者は、喪失することを運命づけられた複数の時代と現在とを同時並行で描く。グリフィスはいわゆる古典的な物語映画の基本を作ったと考えられているが、映画という新しいメディアを用いて、妄執にも似た、途方もない時間体験を実現しようとする一面も持っていた。基本がまだ定まらない時代に、時間の断片を統合しようとするグリフィスの様々な試みについて考察する。