「リチャード・フライシャーとの冒険 PART2」
関口良一(映画研究者)
映画を観ていると、もう幾度となく目にしてきた筈でありながら、その同じ画面がこれまでとはまったく異なる相貌をまとって現われたように思える瞬間が、時として訪れることがあります。フライシャーの『恐怖の土曜日』におけるそのような体験を手掛かりとして、そのとき発生した視点の揺らぎを周囲に波及させていったら何が起きるかを、まずは『ならず者部隊』を中心とした50年代の作品群との相互作用を通して明らかにしてみたい。それはまた、「一拍遅れてハッとそれに気づいた瞬間のインパクトが映画の印象を決定的に染めるのであり、それこそが映画の醍醐味のはずである。」(「B級ノワール論」P.295よりの自由な抜粋)ところのイメージのアナクロニズムの恰好の実践であり、フライシャーの画面に導かれての海図のない航海への船出ともなるでしょう。